第18話 メアリー・マカロンの孤独②
中央公園に行くと、
「メアリーちゃん!」
「シュナちゃんなのです!今日はよろしくなのです」
まずはご挨拶。
遊べるのが嬉しくてスキップして踊りだしそうである。
「お腹空いたね〜」
「腹ぺこぎゅーなのです。お昼ご飯にするのです!」
ということで、まずはお昼ご飯に行くことにした。ローストビーフの美味しいお店に行った。
丁度お昼時だったので、少し並んだがすぐに入ることが出来た。
「シュナちゃんは何食べるです?」
「ローストビーフ丼にしようかな」
「私もそれにしようと思ったのです!気が合うのです」
店員さんが注文をとりにくる。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「はい!ローストビーフ丼2つ!」
「畏まりました」
注文をして待つ。
やがて、ローストビーフ丼がとどいた。
「わー!とっても美味しそうなのです!」
「ね!食べよっか!」
「「いただきます(なのです)!」」
卵黄を崩して、ローストビーフにかける。素敵な組み合わせだ。
「ん〜!柔らかいお肉にとろとろの黄身がマッチして美味しい!」
「このローストビーフ美味しいのです!ジューシーで柔らかいのです」
美味しく味わって食べた。
「「ごちそうさまでした」」
「美味しかったのです」
「ね!美味しかったね」
その後2人は、お買い物に行くことにした。
2人は服の趣味が似ている。一緒にお買い物を楽しめそうであった。
行ったのはMelty Fonduo。フレンチガーリーでプリンセス風なお洋服が沢山売っているお店だ。
「これ可愛い!」
「可愛いのです!」
まず見たのは、アッシュグレーのオフショルのトップス。肩にリボンが付いていて可愛い。黒の短いスカートと合わせてみた。少しクールな雰囲気だ。
「これ使いやすそう!」
「確かにです!」
続いて見たのはホワイトの万能トップス。襟元にフリルが付いていて、ボリュームがあって華やかだ。胸元にはリボンが結ばれている。
こちらはアイボリーホワイトのマーメイドスカートを合わせると可愛い。お嬢様っぽい可愛さ。
早いもので、秋服も置いてある。
チャイニーズピンクのベロア素材のトップス。純情な乙女心のような可愛さだ。
「これ秋っぽくて可愛いのです!」
銀鼠色と煉瓦色のチェックのワンピース。ウエストの部分がキュッと締まっていてスタイルが良く見えそうだ。背中にリボンが付いていて、裾から白のレースが見える。
え?私のスタイル?勿論パリコレも認める(かもしれない)綺麗なスタイルだ。神だからね。好きに弄れるのだ。
桜色のセットアップも可愛かった。すこしカッチリしたフォルムで、プリーツスカートが魅力的だ。光沢のある生地で、特別感がある。
沢山お洋服を買い、店を出た。
「沢山買ったねぇ」
「いっぱい買っちゃったです」
紙袋を両手に持ち、ホクホク顔の私達。楽しいお買い物だった。
その後、2人は湖沿いの公園を歩くことにした。
荷物は亜空間にしまっておいた。
最近の夜は秋の風が吹くようになったが、昼はまだ夏らしい暑さが身を溶かす。
公園にはトンボが飛んでいた。
2人は日傘を差しながら公園を歩いた。メアリーちゃんはピンクでフリルの付いている傘、私は白地に水色でチェックの線が入っている、端にフリルの付いた傘を差した。
「ちょっと暑いね〜」
「暑いのです。日傘あって良かったのです」
湖の水が太陽を反射してキラキラしている。涼しげで、美しかった。
歩きながら、メアリーは思う。
こうして二人でいる間は、孤独を感じないで済む。でも、家に帰ればあの身を引き裂くような孤独が待っているのだと思うと、メアリーは憂鬱になった。そんなの嫌だ。どうにかしないと。
メアリーは、シュナにその孤独を相談することにした。
「シュナちゃん、私孤独なのです。家に帰っても一人だし、ずっと暇でぐるぐるーなのです。どっか行きたいです」
俯きがちに、話すメアリー。シュナは頷いて相槌を打った。
「そうなんだ…。ねぇ、メアリーちゃんさえ良ければさ、私の家にメイドとして来ない?賑やかだよ」
「シュナちゃんの家に、メイドとして…?」
「うん!」
アリだった。シュナの家に行けば寂しくない。
「行くのです!お引越しするのです!」
「よし!引越しは私に任せて!」
「シュナちゃん…じゃなくて、お嬢様?は力持ちなのです?」
「ううん、魔法で動かせるから」
「凄いのです!」
そうと決まれば、お引越しである。2人はお散歩を終えた。
「私の家に案内するのです!」
シュナはメアリーに家に案内してもらった。西洋風の小さなアパートの、小さな部屋だった。
「家具ごと私の家に転移しちゃうね」
「凄いのです!お願いしますなのです」
シュナは事前に、家に部屋を作っておく。そしてそこに、神力で家具を転移した。
メアリーの家には、何も無くなった。
「さっさと引き払ってくるのです。ちょっと待ってて欲しいのです」
「うん、ごゆっくり〜」
メアリーは大家に話しに行き、引き払うことが決まった。
「退居してきたのです!」
「お疲れ様!じゃあ、私の家に行こうか」
メアリーの家は街の外れにあるので、中央の高級住宅街までは少し歩くことになる。
だが、メアリーといるといつもは面倒な移動も楽しく思えるのだった。
「メアリーちゃんは好きな食べ物なに?」
「苗字にもある、マカロンなのです!蕩けて美味しいのです。ベリーのマカロンが特に好きなのです」
「へー可愛い!私もマカロン好きだよ」
「城下町にマカロンの美味しいお店があるのです。道中にあるなら寄ってくです?」
「いいね!先住の皆にお土産にしよう」
「先住って誰がいるのです?」
「悪魔が5人いるよ。皆いい人だよ!」
「そうなのです?それなら良かったのです」
メアリーがマカロンのお店に案内してくれた。
「この14個セットのやつ1つ!お代は私が払うね」
「悪いのです、私が出すのです。私の菓子折りなのです」
「そう?じゃあ半分ずつ出そっか」
半分ずつ出し合って買った。
歩いているうちに、シュナの家に着いた。
「ご、豪邸なのです…広いのです」
「ありがとう!大好きなお家なの」
扉を開け、家に入る。
「ただいま〜」
「お帰りなさいませ、我が君。そちらの方は?」
アスモデウスが出迎えてくれる。どう察知してるのか分からないが、帰るといつも出迎えてくれるのだ。悪魔の勘かな。
「今日から同居することになった、メアリー・マカロンちゃん!メイドとして雇うよ」
「メアリー・マカロンなのです!これ、つまらない物ですが菓子折りなのです。シュナお嬢様と買ったのです」
「これはご丁寧に。ありがとうございます」
アスモデウスが笑顔で対応する。印象は良いようだ。仲良くしてくれるといいのだが。
「ただいま〜」
「あ、おかえり」
「おかえりですわ」
「「おかえりなさいませ」」
オリエンス達はテレビを見ていた。
「今日から同居することになった、メアリー・マカロンなのです!」
「メアリーさんからお菓子をいただきました。皆で食べましょう」
「一人2個ずつねー」
「お、やったな!」
という事でお茶にした。アスモデウスが、メアリーに紅茶の淹れ方を教えている。うん、メイド業は任せて良さそうである。
「「「いただきます」」」
皆でテーブルを囲んだ。
メアリーはシュナに話す。
「お嬢様は私を孤独から救ってくれた神様なのです」
「そう?まぁ確かに神なんだけどね」
「やっぱりなのです!」
やっぱ神って分かるのかな。オーラ出ちゃってるかな?なんてシュナは思ったりもした。
マカロンは美味しかった。メアリーの好きなベリー味、それからバニラ、ショコラ、ピスタチオ、レモン、キャラメル、アールグレイの7種類であった。
私はアールグレイとベリーを食べた。濃厚な甘みとアールグレイの豊かな香り。ベリーの爽やかな甘み。どちらも美味しかった。
〜〜〜
そうして、その日からシュナの家で暮らすようになったメアリー。寂しさも埋まったので、ホストに通うのもやめた。
メアリーは、幸せだった。
家で待てば、5人の悪魔と1人の神。賑やかだった。シュナは、私を孤独から救ってくれた、文字通りの神であった。
今や、メアリーの心の中は簡素なトンネルではなく、鮮やかな美術館だ。毎日が彩りに満ちていて、生き生きとしている。
かくして、メアリー・マカロンの孤独は癒されたのであった。
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