第10話 古代迷宮(アーティファクト)にて①

「ねぇ、私砂漠地帯の古代迷宮アーティファクトに行きたいんだよね」

「なるほど。明日行きますか」


 発端は私の一言であった。アスモデウスに話しかける。この間サタナに聞いた、南の砂漠地帯の古代迷宮アーティファクトとやらに行きたいのだ。


「誰が行きますか?私は勿論行きますが」

「…己が行こう。砂漠地帯と言えば雷属性の魔物が出る。地魔法を扱う己はお力添えできるであろう」


 砂漠地帯は雷属性の魔物が多い。そして雷属性には森属性である地魔法や風魔法がよく効くのだ。アメイモンの得意分野であると言えた。


「お土産話、待ってますわ」

「俺も留守番するわ」

「僕も待機します」


 他3人は待機組となるようだ。


「じゃあメンバーはアスモデウスとアメイモンね。準備しよっか」


 メンバーが決まった。早速準備にとりかかる。

 ご飯の心配は無い。元より私はご飯を食べなくても生きられるが、収納魔法に詰め込んでおけば運ぶ手間がないからだ。 


 亜空間に、迷宮の探索に必要そうな物を詰めておく。忘れものがあったら転移で戻ってくればいい。

 その日は準備を終えて早めに寝た。明日が楽しみだが、ぐっすり眠れた。


 次の日、よく晴れた空の元、私達3人は出発した。


「しゅっぱーつ!」


 といっても転移である。砂漠を越えるのは中々大変なので。

 迷宮の入口まで転移門で転移した。


 入口の近くに人が3人いた。金髪の短い髪の人、桃色の髪の人、ローブを着た薄い黄緑のボブカットの人。

 気になったので話しかけてみる。


「どうかしたんですか?」

「あぁ、これは旅の人。実はな…」


 話を聞くと、金髪の彼は古代迷宮アーティファクトの西にある大国バレの第3王子らしい。

 国の王都で突如現れ暴れた大きなロボットが、この迷宮の中に入って行ったのだと。ロボットに第3王子が命を狙われ、第2王子が怪我をしたそうだ。一連の話は、王位継承権争いの一端であると考えられている。なのでロボットを追って調査をするのだとか。

 第3王子、第4王女、第5王女直々に、調査に来たらしい。

 第3王子が申し訳なさそうに話す。

 

「そなたは、強い者であろう?見た所強い悪魔も従えているみたいだし…良ければ、調査に協力して貰えないだろうか」

「私はいいけど、2人はどうしたい?」

「「御心のままに」」

「じゃあ、大丈夫!」

「ありがとう、旅の人。目的は、ロボットを見つけ破壊すること。恐らくロボットの中に操っている人がいるはずなので、それが誰か知りたいのだ。」


 そういうことらしい。私としては、迷宮探索に新しい目的ができてワクワクだ。


「私はシュナ。彼はアスモデウスで、こっちの彼はアメイモン」

「我はルーカス。そちらの桃色の髪の者は第4王女のモモナ、黄緑色の髪の者は第5王女のジェイデンだ」


 自己紹介も終えて、早速迷宮に入っていった。


 迷宮の様子は広い遺跡であった。土で出来ている薄茶色の建物だ。


 天井が明るいな?と思って見たら帯電した蝙蝠がいた。


電気蝙蝠スパークバットです』


 聞く前にサタナが教えてくれた。


 どうかこっちに来ませんように…とソロリソロリと歩く。


「どうかしましたか?」

「蝙蝠こっちに来ないといいなぁと思って」


 フラグであった。蝙蝠の下を通ると、一斉に電気蝙蝠スパークバットが飛び立つ。

 そして何匹かこっちに来た。


「うわぁ」


 やっぱりこっちに来た、と思った。


泥砲弾マッドショット!」


 アメイモンが冷静に魔法で撃墜してくれた。


「助かったよ」

「これしきのこと、構いません」


 クールである。


 少し細い道を抜けると、次の部屋があった。真実の口のようなものがいくつもある。

 壁に何か書いてある。


「なになに…正解のボタンを押すと扉が開き、不正解のボタンを押すと指が千切れる…だってさ。怖いね」

「恐ろしいな…」


 ルーカスが腕を摩っている。


「私に任せろ」


 モモナさんには案があるらしい。


「当てがあるのか?」


 ルーカスが聞く。


「勘だ」

「またお前はそうやって!危ないだろう」


 ジェイデンがモモナを叱る。いつもそんな感じなんだろう。


「任せろ、勘は良い方だ」


 そう言うと、真実の口のうちの1つを選んで、中のボタンを押した。


 ゴゴゴ…という音と共に扉が開く。本当に正解したらしい。


「凄いね」

「勘がいいと言っただろう?」


 モモナのドヤ顔が炸裂した。可愛い。


 部屋を進むと、谷が行く手を塞いでいた。

 渓谷の先が進む先のようだ。橋のようなものは無い。


「己が橋をかけよう」


 アメイモンが名乗り出てくれた。地魔法でできるのだろう。


地形テレイン操作マニピュレート


 土が動き、谷の向こう側まで届く。橋が出来た。


「「「おぉー」」」


 モモナとジェイデンと声が重なる。

 アメイモンの地魔法があれば土木工事なんてちょちょいのちょいなんだろうな。

 出来た橋を渡る。


 その先は、なんだか暗くなっていた。天井に電気の線が入っている。


「おい、何かあるぞ」


 ルーカスに言われて見ると、そこには近未来的な一列の電車のような、トロッコのようなものがあった。全体的に黒い。電気が通っているようで、ネオンのような照明がついていた。


「これ…乗ればいいのか?」

「乗るしかないだろうな」


 ルーカスに、モモナが頷く。

 近付くと、扉が勝手に開いた。自動ドア!この世界にもあるのか。ロストテクノロジーかもしれない。夢がある。


 全員が乗ると、扉が勝手に閉まってトロッコが動き出した。

 どんどん加速していく。しかもかなり急な坂を降りていく。ジェットコースターみたいだ。シートベルトは無い。


「ギャアアアアア!」

「「うおおおお」」

「わあああ…」


 上からルーカス、モモナと私、ジェイデンである。悪魔の2人は特に何も言わず、澄ました顔をしている。アスモデウスなんかニッコニコだった。恐らく楽しいのであろう。私も少し楽しい。


 右に行き、急な坂を降り、左に行き、また降る。

ハイスピードで進んでいく。ちょっと浮いた。


 乗っていると、途中で景色が変わった。土壁から黒い石の壁になったのだ。


「なんかっ…雰囲気変わったかっ…?」

「変わったな」


 ルーカスにジェイデンが答える。


 やがて段々減速していき、トロッコが止まった。


「はぁ、はぁ、はぁ…これ帰りも乗るのか?」

「そうかもな。まさかビビってんのか?」

「び、ビビるわけないだろう!我は第3王子だぞ」


 モモナがルーカスを煽る。

 が、ルーカスは勇ましいことである。


「楽しかったです、我が君」

「よかったねぇ。私もちょっと楽しかったよ」


 ルーカスが信じられないという顔でこちらを見ている。前世でもジェットコースターはわりと好きだった。


「我が君、ここに隠し扉があります」


 アスモデウスが隠し扉を見つける。


「お、ナイス。お宝あるかもね」

「なにっ!お宝か!」


 ジェイデンが反応する。


「まだ見つかったわけじゃないよ」

「なんだ…」


 隠し扉を開けて、中を進む。古代迷宮アーティファクトの入口とは雰囲気が変わって、近未来的だ。黒い石製の壁に電飾が埋め込まれていて、少し明るい。

 すると、突然。


「侵入者、発見」


 そんな声が響いて、ビームが飛んできた。


「うわっ」


 驚いて避ける。

 ガシャン、と音がして正面にロボットが沢山降りてくる。


 ロボットがナイフのようなものを取り出して、こちらに来た。

 私達も得物を構える。


「戦闘、開始」


 応戦である。

 一番最初に飛び出したのはモモナであった。勇敢である。


「おりゃっ!」


 ルーカスは剣を構え、ロボットを突き刺した。どんどん串刺しにしていく。


「はあああっ!」


 モモナはロボットを蹴って、壁にぶつけて壊す。


電気砲弾エレキテルショット!」


 ジェイデンは雷魔法でロボットを壊していく。

 3人とも見事なものであった。


「魔法を使うまでもありません」


 アスモデウスは素手でロボットを壊していく。力強いんだな。


泥砲弾マッドショット


 アメイモンは地魔法でロボットにダメージを与える。


 私も剣で応戦した。ガウルさん印の片手剣スパタはロボットの装甲も切れる。


 モモナが一人でどんどん進んでいく。


「モモナ!一人で行くと危ないだろう!」


 ジェイデンが叫ぶ。


「私は大丈夫だ!自分の心配をしたらいい!」

「お前はいつもいつもそうやって…命知らずも大概にしろ!」


 ちょっと喧嘩になってしまっている。


「己がどうにかしよう。土石流山ディブリ・マウント・小」


 アメイモンが呪文を唱える。

 すると、土石流の小山がロボットを飲み込み、モモナの辺りまでのロボットが壊れた。


「モモナ!」


 ジェイデンがモモナの元まで走っていく。

 丁度、最後の一体を壊したところであった。

 ジェイデンがモモナを抱きしめる。


「心配するだろう…一人で行かないでくれ」

「…悪かったな」


 モモナはバツが悪そうに頬をかいた。


 ロボットが居なくなったことで、奥の扉への道が開ける。

 ドアを開けると…なんとそこには、金銀財宝があった!


「おおぉーっ!!宝の山じゃないか!!」


 ジェイデンが駆けていく。財宝やお金が好きなようだ。

 にしても、よく残ってたな?


『アスモデウスが見つけた隠し扉には、高度な隠蔽魔法が施されていました』


 ということらしい。


「山分けだな」


 モモナが言う。


「私運ぶよ。収納魔法にいれとけるからさ」

「分かった。頼もうではないか」

「この空間の切れ目に詰めてってね」


 皆で手分けして宝の山を亜空間に詰めていく。


 行き止まりだったので、来た道を戻って隠し扉じゃない方の道を行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る