第六話「地味男を捨てた地味男」
地味男の日常はつまらないものである。会話がない、人肌が恋しい。こう感じてしまうのもきっと
だから今日は少し進んでみようと思う。
目の前の観察日記と化してしまったノートを
「身体的な接触……」
そう、
本音を言うならば、
授業終了まで後一分。その時間が長く感じる。
男子が女子に話かけるよりよっぽど気が楽なはずだ。前の世界も、いつだって女子は特に気にせず男子に話しかけていた。それなのに男子は恋心や下心がほんの少しあるからか、ちょっとだけ緊張して女子に話しかける。
以前の価値観が抜け切っていない。
鐘の音が鳴り、授業の終わりを告げる。教室内はすぐに賑やかさを取り戻し、友人たちが一斉に立ち上がって話し始めた。しかし、
「……よし」
心の中で小さく呟き、
「……でも、それでも」
「わっ、た、
その問いかけに、
「い、いや、ちょっと話したいことがあって……」
「何の話?」
「最近……その、授業でわからないところがあって、ちょっと聞きたかったんだけど……」
「え゛っ……!」
時が止まったかのように
その様子に、
「……ご、ごめん、やっぱり――」
「――だ、大丈夫!!!」
突然復活した
それを見た
「あっ、ごごごごめん! 予想してなくて嬉しかったっていうか、つい……」
「う、ううん、気にしてないよ」
「そっか……」と
友人二人は何かを感じ取ったのか、「あっそうだ、アタシ今日昼休みに先生に呼ばれてタンダー」「ワタシもー」とこの場を去る。これにより、ここにいるのは同じ教室にいる少し離れた場所のクラスメイト、そして目の前の
「それで、どの授業の話?」
「あ、ああ……そうだね。えっと、数学の授業で……」
「ここかな? それともこっち?」
――ってそうじゃない!今回の目的は接触をした後の様子の確認だ!
「…………っ?」
おかしな部分はない。今まで
「ここの部分がちょっと」
「あ、あー、分かりにくいよね」
――接触部分が小さすぎたかもしれない。もう少し大きな接触を試さなきゃ。
「ねえ」
「……うん、何?」
その優しい声に
「いや、何でもない。……ありがとう」
「う、うん」
「……ふっ」
今の反応を確認できてほっとした。
――このまま
この世界でのまともな女友達がようやくできたかもしれないのだ。催淫にかかっていないなら、きっと仲良くできるはずだ。
つけ加えていうならば、
いくら地味男ガードがあるとはいえ、ここまでの接触があったのに催淫の反応を出さないとなれば、それはもう確実だろう。つまり、素の自分を出せる存在になりえるということ。運命の人、そんな単語が
「
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