第五話「尾行する地味男」
一晩置いて考え、決めたことがある。それは
方法はいくつかあるだろうが、直接聞くなんて野暮なことはしない。口では何とでも言えてしまうし、過去の経験からしても、女性たちは襲いかかる直前まで平然を装っていたことが多かった。
「――ここは……であるからして」
――もし、
「……やっぱり、ストーキングしかないか」
――まずは、昼休みだな。
その時、授業終了を告げる鐘が教室内に鳴り響いた。クラスメイトたちは一斉に立ち上がり、お弁当やパンを取り出し、友達同士で楽しげに話し始める。
――行くしかない。
廊下を進む
やがて、
彼は少しずつ距離を詰め、できるだけ物音を立てないように気を使いながら、
――これは……?
「こはくー? ご飯だよー」
こはくは
「今日も元気そうでよかった。こはく、お腹空いてたんだね」
「はい、ご飯。今日はあなたの好きなやつを持ってきたんだよ」
「そんなに急いで食べたら、喉に詰まっちゃうよ」
彼女の注意には耳を貸さず、こはくは夢中でご飯を食べ続けた。
「こはく、今日は何してたの?誰かにいじめられてない?」
もちろん、猫が言葉を理解するわけではないが、
やがて、こはくがご飯を食べ終えると、
「もう、甘えん坊だなあ」
二人――
「……なんだ、俺は一体何をしてるんだろうな」
思わず呟いた声が、自分でも驚くほど冷たく感じられた。今まで疑いの目でしか見てこなかった
「催淫されてるかどうか、なんて……」
しかし――それでも警戒心は完全には消えない。過去のトラウマが、彼を完全には自由にさせてくれない。それでも、今この瞬間、
「もう少し、観察を続けてみるか」
――催淫なんて、本当にあったのだろうか?ただの自分の思い込みかもしれない。
そんな考えが頭をよぎりながらも、
教室に戻ると、昼休みの終わりが近づいていることを告げるように、クラスメイトたちがそろそろ席に着き始めていた。
ノートの表紙をゆっくりと開き、ページをめくると、すでにいくつかの観察項目が箇条書きされているのが目に入った。
「昼休み中に教室を出て、廊下を歩き、中庭に向かう。途中、一度も周囲を気にせず、一定のペースで歩行。中庭のベンチに座り、持参したタッパーから茶色の粒を取り出し、猫に餌を与える。猫に対して非常に優しい態度を取り、終始無防備な笑顔を見せる」
「補足、現時点では"催淫"の兆候は見られないが、引き続き観察が必要。今後、別の兆候が現れる可能性も考慮」
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