第11話 アニマ

「ただいまアニマ」

「おかえりカラ」


カラが買い物から帰ってくると、空っぽだった部屋が、明るくなる。

買い物袋の中身はほぼ俺の薬で、カラの食べ物なんてほぼ入っていない。

俺が、カラの足手まといになっているんだ。

この時間逆行理論で稼いだ金を、自分だけのために使ってくれたら、君はもっと、それこそ学校にだって行って、運動は出来るし、器用だし、何かを成し遂げていたんじゃないか。いや、そんな大きなことじゃなくても、それこそ、もう一度、料理を楽しむようになるとか。

カラ自身の、人生を、生きてほしい。


「何かあったのか?」

「いいや、何も」


もう一人のカラは現在に帰っただろうか。

そして現在の俺は、生きたいと、思っているのだろうか。


何度も、何度も、押し寄せる、死の予感。


あと、一か月といったところか。


それにカラはあまり分かっていないようだが、怪しい薬局から法外料金で買う薬の副作用は強い。咳が酷くなっていくにつれ、カラは強く高い薬を買い、副作用も強くなる。

俺は搔きむしって血のにじむ腕を見た。体を拭く時に君に心配されたが、虫の仕業とでも言っておいた。

本当は、薬が切れた瞬間に、自分でも、驚くような罵詈雑言を吐きながら、何かを傷つけたいという衝動が抑えきれなくなったのだ。


俺は、最後まで冷静でいられるのだろうか。

下半身はもうほとんど動かないし、血を吐くくせに、口は最後まできけるのが、この病気の嫌なところだな。


やっぱり…。


想像するだけで、身が引きちぎれそうだ。


俺が、馬鹿だから。

でも現在の俺は、ちゃんと、カラに教えられたんだな。君が一人でも逆行出来るように。

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