第10話 ケンザ

すっかり衰弱した君は、心地よい日差しを浴びて輝いていた。


「ケンザさん…」


わしの名前を呼ぶその声とともに、やつれた指がわしの頬に触れる。

ああ。この温度をわしは感じることなく、別れるところだったのか。

自分の手でその指を包み込み、頬に押し付けた。


「月並みな言葉だけれど、私は70年前、あなたに会えて幸せでした」


ああそうだ。そうなのだ。

今この瞬間の悲しみを表す言葉は見つからない。それほどまでに自分は悲しみの底にいる。

それでも…


「何度この命を繰り返しても、君に出会い、君と生きて、君を見送ろう」


艶を失わぬ君は、朗らかに笑い、死んでいった。







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