尻尾

第19話

俺は、ここで一人で生きていく。現在に変えればその19年分の記憶が、流れ込む。目の前に血の付いたベッドや生命維持の機械、管はなくて、コンピュータもない。

アニマがどうやって生きていくのかは分からない。でも運が良ければ、その賢さでラブサのようにのし上がって、手術を受けられるかもしれない。

俺がいなければ、アニマは、ここにとどまることなんてなくて、馬鹿に看病されることもなくて、もっと、上手く、生きられた。

俺が、アニマの人生の足手まといなんだ。


そうなんだろ、アニマ。


俺は俺を置いて、アニマだけを抱きかかて、比較的綺麗そうな家を探しに行こうとした。

扉の取っ手に手をかけると、背後で俺が泣き声を上げた。


アニマはずっとベッドで、こうやって俺が出て行くのを見ていたのか。


『おかえりカラ』


その言葉がどれだけ大事だったんだろう。


俺は馬鹿だ。

頭じゃない、脳じゃない場所で、物を考えてしまう。

自分の心に従ってしまう。

向き直り、足を動かす。


-誰も、失わない、選択をする。

失うってなんだ。


俺が、選んだ。


「ただいまアニマ」


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