第5話 エピローグ

「契約…終了!?」

「そう、アイドル保険はアイドルのためのもの」


 唐突の社長に言われた言葉。そりゃ、芸能界に残れただけでも御の字だが。


「あなたはもうアイドルじゃないんだから、適用されないわ」


「そ…そうですか…」


 そっか…。もう、アイツには会えないんだ。…そっか。


「…うららちゃん?」


「…あれ…あれれ?」


 私、泣いてるの?何で?あいつに会えないから?あ…あんなに毛嫌いしてたのに…。な、なんで?あれ?あれれ?


「…そっか、いい仕事してたのね。彼」


社長はにこりと、


「…新しいマネージャー、紹介するわね」


 そう言うと、タイミングよくドアがコンコンコンと、三回ノックされる。扉から入ってきたのは…。


「…へ?」


「よう」


 …タツマ?タツマがそこに立って…る?なんで?


「ったく、この間の武道館ライブ。公衆の面前で大立ち回りして、大失敗やらかしたせいで、あの会社クビになっちまってな」


 タツマがいる…。私…今、どんな顔してる?


「まー…運良くここの社長に拾ってもらっ…」


 思わず駆け寄って抱き着いた。もう感情、頭はぐちゃぐちゃだ。


「このバカ!!わたしの気も知らないで…!!」


「おお…すまん?…何だこれ?」


「謝んな、アンタはアンタらしく、凛としてろ、こん畜生!!」


 涙が止まらない。嬉し涙でこんなに泣いたのは初めてだ。


「おーおー、お熱いねぇ」


「ちょ…社長、冗談言ってないで何とかしてくださいよー」


 困り果てるタツマを見て、社長はけらけらと笑っていた。


 こうしてわたしの再スタートがはじまる。


 その後もあの男の態度は直らないが、それでいいか。諦めの境地だ。そりゃあ、ものすごく怖いけど、こんなに頼りにできるマネージャーはいない。


 後から聞いた話だけど、タツマには妹さんがいて、私と同じく不本意ながらアイドルをやっていたそうだ。


 そして、ストーカーに命を狙われ、残念ながらタツマは、守れなかったのだという。それが彼がこの業界に入ったきっかけであり、信念らしい。


 芸能界は怖い所だけど、彼がいれば百人力。どんなことでも乗り越えられそうと思わせてくれる。そんな気がする。…そんな気がするんだ。

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