第4話 必ず。
「…そう、決意は固そうね。卒業もやむなしか…」
「引退じゃないんでしょ?確かにタツマ君の見立ては合ってるかもね。彼の見る目は伊達じゃないから」
タツマに付きまとわれて三カ月が過ぎた頃。事務所とも相談し、グループを卒業する方向に動いていた。そのことがかえって話題を呼び、なんと卒業公演は武道館で行うことが決定した。
わがままで抜けるのに、この待遇は何と幸せな事か。しかし、応援をしてくれる人がいれば、当然…。
「殺害予告か…」
そう、卒業を撤回するよう殺害予告の封書が送られてきた。
「どうなの、タツマ君。何か掴んでない?」
「ストーカーや怪しい人物はあがってないですね。我が社総出で捜索しているんですが…」
完璧超人のタツマでさえ、犯人の動向はつかめていない。だが、彼には思い当たる節があるようだ。しかし、一向にそのことを明かそうとはしない。
そのまま、武道館の卒業ライブ当日を迎えた。警察は総動員。観客の手荷物検査も入念に行われた。しかし、そこまでやっても犯人の手掛かりはつかめなかった。
そして公演開始前のステージ裏、わたしたち八人は円陣を組んだ。これがこのメンバーと歌う最後のステージ…。
「みんな、ごめんね?わたしのわがままで…」
「何言ってんの、ここまで引っ張ってくれたの感謝してるよ?」
「うららなら、この先も絶対上手くいくよ」
「…よし!!行こうッ!!」
そして、わたしたちはステージに登場した。その時ふと違和感を覚えた。
…あれ?あいつは?
そう、あのべったりくっついてうんざりだったあの男がいない。しかし、雑念を抱いてる場合じゃない。今はこのステージに全てを注がなきゃ!!
公演は始まり、わたしのアイドル人生でも間違いなく最高の盛り上がりだった。バンドもダンサーも最高のパフォーマンスを繰り出している。
このまま、後半もがんばろう…と思った矢先。
ダンサーの一人がこっちに近づいてきた。
それは振り付けとは違う動き。まさか…。手にはアーミーナイフ。この男が…!?
「駄目だ…。君はアイドルだ…永遠に…他のものになっちゃだめなんだよ!!うららちゃん!!」
ダダダダダッ!!
突然のアクシデント。皆も意表を突かれてしまった。まさか犯人が身内のスタッフ…!?
でも、わたしは…。
短期間だったけど。
あんたを…信じてる!!
「そこまでにしろや、半熟野郎…!!」
バンっ!!どさっ!!ぎりりり…。
そう言うと、もう一人のバックダンサーが走り寄り、犯人をねじ伏せる。アーミーナイフを弾き飛ばすと、腕ひしぎで取り押さえ、そこに警官隊がなだれ込む。
そのダンサーは当然、タツマの変装。どこまでも近くでわたしを守ってくれた。
会場は騒然とし結果、公演は残念ながら大失敗成功。だが皆、安堵し、事件は幕を閉じた。
あの後、警察の事情聴取で延々、たらい回し。もはやくたくただ。
でも何より嬉しかったのは、タツマが曲の振り付けを全て完璧にマスターしていたこと。私たちの振り付けは地味だが、業界一難しいというのに…ふふっ。
こうしてアイドル「駒込麗」はアイドルを卒業というか、消滅。
「うらら」としてソロになった。
超実力派シンガーとして注目されるのはもう少し先の事。
しかし、これで思わぬことが起こった。
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