第4話 私の想いなんだから

登場人物


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:23

身長:172


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:24

身長:161





次の日曜日。

いつもの様に汚部屋おべやに文句を言った後に

太希たいきは片付けを始める。


そんな太希の目に机の上に置かれた小さな箱がまる。


「なんだ?この箱。先週はなかったよな?」


そう太希が箱を手に持って水樹みずきに尋ねる。


すると水樹は慌てた様子でその箱を奪い取る。


「こ、これは自分で片付ける。」


そう言うと水樹は台代わりに椅子を持ってきてその椅子の上に立つ。


その瞬間。椅子がくるりと回って水樹は落ちかける。


そんな水樹の体を太希が受け止める。


「危ないなぁ。もっとまともな台はないのか?」


そう太希が尋ねる。


「残念ながらありません。」


そう答えると太希に体を支えてもらいながら水樹は小さな箱をタンスの上に置く。


「支えてくれてありがとう。」


そうお礼を言いながら水樹は椅子から下りる。


「いえいえ。」


そう答えた後に太希はタンスの上にある先ほどの小さな箱に目線を向ける。


「勝手に取ったら怒るからね。」


そう水樹は警告する。


「取らねぇよ。」


そう答えると太希は片付けを再開させる。


その後の流れはいつもと同じだ。

片付けを終えたらハンバーグを食べ、太希がその洗い物をする。


洗い物を終えて太希が帰ろうと玄関に向かうと水樹が声をかける。


「ねぇ太希君。」


「ん?」


「来週の日曜日。太希君の誕生日だよね?」


そう聞かれて太希は自分の誕生日を思い出す。


「そういえば、そうだな。」


「パーティーしようよ。2人だけで。

ケーキは私が買っておくからさ。」


そう提案する水樹の表情はとても明るいものだった。


そんな表情を見たら断ることはできない。


「チョコケーキでお願いします。」


そう太希は注文する。


🧹


そして…次の日曜日…。


太希はいつもの様に家のチャイムを鳴らすが返事はない。


「あれ?居ないのか?

仕様しょうがない。使いますか奥の手。」


そう言って太希がリュックから取り出しのは合いかぎだった。


ちなみにこの合い鍵を使うのは初めてである。


そんな合い鍵を使って家の中に入った太希は部屋に電気がついている事に気がつく。


「なんだ。居んのかよ。

お~い。水樹~。」


そう声をかけながら太希は家に上がる。


次の瞬間、太希の目に映るのは頭から血を流して倒れている水樹の姿だった。


「水樹?!」


そう叫びながら太希は水樹に駆け寄る。


水樹の体を抱き抱えながら太希は何度も水樹の名前を呼ぶ。


「…た…太希…君?」


そう水樹が細い声で太希の名を呼び返す。


「良かった。生きてるな。

今、救急車呼ぶからまってろ。」


そう言うと太希はズボンのポケットからスマホを取り出す。


「…やっぱ…ちゃんとした台…買うんだったな…。回る椅子…危ないね…。」


その水樹の言葉を聞いて太希は倒れている椅子を見つめる。


「反省は後にしろ。」


そう言って病院に電話をかけようとする太希を水樹が手で止める。


「…意識…飛びそうだから…聞いて…。」


「なにを?」


「その辺に小さな箱…落ちてない?」


そう水樹に聞かれて太希は周りを見渡すと床に落ちた小さな箱を見つける。


その箱は先週、水樹がタンスの上に置いた箱だった。この箱を取ろうとして水樹は椅子から落ちたのだと太希は理解する。


「…その箱…太希君への誕生日…プレゼント…なんだ。」


「はぁ?!誕生日プレゼント?!

そんなの後でいいだろ?!」


「…絶対…受け取ってよ…。

私の……なんだから。」


そう言い残すと水樹は目を閉じる。


「水樹…?水樹…?!水樹ーぃぃ!!」


そう太希は叫んだ後に急いで病院に電話をかける。


だが・・・水樹が助かることは…なかった。

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