第3話 いつまでもは続かない

登場人物


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:23

身長:172


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:24

身長:161






{・・・水樹みずきみたいに素敵に微笑む人。}


止まった時間を動かすように太希たいきは大きく手を叩く。


その音で水樹は意識を現実に戻す。


「片付け続けようぜ。お前は洗濯物しろよ。どうせまってんだろ?

さすがに女の洗濯までは男のオレじゃできんからな。」


そう太希に言われて水樹は返事を返さずに風呂場へ向かう。


そんな水樹の頭の中には先ほどの太希の言葉が洗濯機の様にぐるぐると回っていた。


🧹


それから数時間後。

部屋は完全に綺麗になった。


片付けを終え、いつものように自分が作ったハンバーグを食べながら水樹は太希に話しかける。


「・・・ねぇ。」


「ん?」


「私達のこの関係てさぁ、いつまでも続くかな?」


そう聞かれて太希は考える。


「・・・いつまでもは…続かないんじゃないか?」


その意外な太希の返事に水樹は驚く。


「どうして…そう思うの?」


そう水樹が少し緊張した声で尋ねる。


「お前が言ういつまでもの期間が分からんから上手くは言えんが、結局この世にはさぁ永遠はないんだよ。」


「え?」


そう太希の言葉の意味が分からず水樹は聞き返す。


「人生にだって終わりがあるように全てのものには終わりがあるんだよ。

それはきっと目に見えるものだけじゃなく、目に見えないものだってそうさ。

例えば、死んでった人の想いを生きてる人が受け継いだとしても、それはもう別の想いだよ。誰か違う人にわたった時点で似た別ものに変わるんだ。」


そう想像よりも壮大そうだいになっていく話に水樹はついていけない。


「私はそんな大きな話はしてないんだけど。」


そう少し困惑した様子で水樹が言う。


「一緒だよ。」


「え?」


「オレ達の関係も。

だってオレ達の人生が一生同じなわけないだろ?変わるんだよ。分かりやすいので言うと恋愛とかかな。」


「恋愛?」


「オレかお前に恋人ができたら、この関係は絶対終わる。少なくとも、2人きりではなくなるな。」


そう太希が言い切る。


「だから、いつまでもは続かない。」


そう太希は小さく呟いて話をめる。


「・・・太希君は寂しくないの?」


「え?」


「そんな未来。」


そう水樹が寂しそうな瞳を太希に向けて尋ねる。


「・・・さぁ。さすがにその時になってみないと分からねぇな。」


そう太希は水樹から視線をらして答える。


🧹


ハンバーグを食べ終えて洗い物を終えると太希は玄関でくつをく。


「それじゃぁ。今日もありがとね。」


そう水樹はいつもの優しい微笑みを見せてお礼を言う。


「あぁ。また来週の日曜日に。」


そう太希は言って水樹の家を出る。


1人残った水樹は考える。

先ほどの太希との会話を思い出しながら。


{いつまでもは続かない。}


太希のこの言葉が水樹の心に重くのしかかる。


🧹


次の日曜日。


「太希君。今日もよろしくね。」


そう言って水樹は家の扉を開ける。


家に上がった太希の眼前にはいつもと変わらない汚部屋おべやが広がっている。


「この部屋に来るたびにオレはループしてるじゃないかと錯覚するよ。」


そう太希は呆れたため息をこぼす。


「おぉ。いいね。ラノベの主人公みたいで。」


そう水樹が明るい声で言葉を返す。


そんな水樹に太希は呆れた視線を向けるが水樹は全然気にしない。


そんな水樹の様子に太希はもう1度ため息をこぼすと気合いを入れる。


「週1回の大きなイベント。水樹の家を綺麗にするぞ大作戦、第何回かはもう忘れた。開始だ~ぁ。」


🧹


「ねぇ、太希君って何色が好き?」


そう唐突とうとつに水樹が質問する。


「あん?また唐突だなぁ。」


「いいから、答えてよ。」


そう水樹に催促さいそくされて太希は考える。


「薄い青色かな。」


「どうして?」


「何となく、青空に似てるから。」


「へぇ。なんか可愛いね。理由。」


そう水樹に言われて太希は恥ずかしそうに少し顔を赤くする。


「じゃぁお前は何色が好きなんだよ。」


そう太希は聞き返す。


「そうだなぁ。赤色かな。」


「なんで?」


「運命の色だから。」


そう水樹は微笑んで答える。


「なんとも…女子らしい理由だ。」


そう太希は言葉を返す。


それからいつもの様に片付けを終えると水樹が作ったハンバーグを2人で食べて太希は帰っていく。


もちろん。そんな太希を見送る水樹は優しい微笑みを見せていた。

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