第9話
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菜々美との勉強も3時間弱が経とうしていた。
正直体力的にキツイ時間帯だ。
そんな集中力が全体的に切れ始めた時にピンポーン〜とインターホンが鳴った。
ん?なんだ?
「何か頼んでたの?」
「いや?多分何も頼んで無いと思う」
「なにそれ」
「でも少し気になるし見てくるわ」
「それなら、モニターから外に居る人、見てみればいいじゃん」
その通りなんだけど。
「いやー今、ぶっ壊れてて」
「そんな事ある?」
「まぁそう言うと事だからちょっと見てくるわ」
「もう〜今解説中なんだから、早くて戻ってきてよ」
「分かってる」
俺がそう菜々美に言い立ち上がろとすると和真が「彩斗、特に問題無いなら、俺が受け取っとくけど」と言ってくれた。
別に変な物じゃないだろうし、大丈夫だよな。
俺は特に深く考えず和真にお願いをした。
「悪い。頼むわ」
「おう」
そう言い和真は玄関の方に向かって行った。
私は、今池田くんの家の前に来ている。
3週間前に初めて会った、同級生のお隣さん。
最初は、別に隣の部屋だからって、特に関わる事なんてないと思ってた。
でも色々あって、私の目の前で気絶されて、その理由が圧倒的な不摂生だと言う事も分かった。
普通に、倒れるくらいの不摂生って意味が分からない。
それで私の家の隣に、いつ倒れるか分からないお隣さんが居るのなんて、居心地が悪すぎる。
そんな居心地の悪い所で生活したく無かったので、食事を管理してあげることにした。
最初は断られてたけど、何とか説得出来た。
我ながら強引だったと今でも思ってしまう。
最初は、何かされたらすぐに飛び出せるくらいの準備はしていた。
でも何もされなくて、最近は結構安心出来る人だなという印象に変わっていった。まだ100%とわ言い切れないけど。
でも毎日美味しいと本気で言ってくれる彼に料理を作るのが楽しみにもなっていた。
それにしても遅いな。
出かけてるのかな?
鍵持ってこようかな。
そんな事を思い始めた時に目の前の扉が開いた。
だけど出てきたのは池田くんじゃなかった。
「え?」
私は驚いてしまってそれ以上声が出てこなかった。
だけど上内くんは驚いてはいるもの結構落ち着いた様子だった。
「どうも」
「……ど、どうも?」
私は反射的に返事をした。
てかこの状況でどうもってこの人どうなってるの?
「いやー何て言えばいいんだろう」
「いや、私は・・・」
「えっと彩斗と何かあるの?」
恐る恐る上内さんが聞いてくる。
「いや、はい」
私はもうどうする事もなく諦めていつもとは全く違う感情で部屋の中に入った。
あ~もう、どうにでもなれ。
「よし。流石に今のとこはこんな感じで分かったよね?」
「おう。サンキュー」
菜々美からの解説を聞き終えると、タイミングよくリビングの扉が開いた。
「和真ありがとう。てか何だ……」
俺は和真にお礼を言いどんな荷物か聞こうとすると和真の背中から伊吹さんが出てきた。
う~んっと目の錯覚だ。勉強のやり過ぎか?
「どういたしまして。荷物は同じクラスの女子だったぞ」
「そんな荷物届いてたまるか!」
俺は反射的にそうツッコムしか無かった。
これは現実だ。
「驚いたぞ。ドアスコープ見たら、伊吹さんが立ってるんだもんな。どうするか相当考えたんだからな」
「私もびっくりしたんだからね。ドアが開いたら上内くんが居るんだもん。友達居るなら、昨日教えてよ」
「悪い。完璧に頭に無かった」
「ちょっと待って。何でこんなに、え?どうして何で伊吹さんが居るの?」
そう。それが普通のリアクションだよな菜々美。
和真が妙に冷静なのがおかしい。
どうやって伊吹さんの事説明しようか。
でも変に誤魔化したり、嘘は付きたくない。
正直に全部言うか。
てかバレるの早すぎね。
そして俺は全ての事を特に隠すことなく2人に言っ
た。
「彩斗お前どんな生活してたんだよ」
俺が説明し終わると和真が少し引いた顔で言ってきた。
「普通倒れる程不摂生しないでしょ。伊吹さんが居なかったら、彩斗死んでるよ」
「全く否定出来ません」
「てか私ご飯作りに来たんだけど、どっか食べに行くの?行くなら帰るけど」
「いや特に食べに行くとか決めてないけど」
そう俺が曖昧な返事をすると伊吹さんは二人の方を向いた。
「えっと、上内くんと…ごめんなさい。名前聞いてもいいですか?」
伊吹さんは菜々美の方を見て申し訳そうに言った。
しょうがないよな、まだ転校して来て3週間ちょっとで、菜々美とわクラスも違うわけだし。
「アハハ。覚えられてないよね。わたしの名前ね桜菜々美だよ。忘れないでね」
「桜さん。OK、覚えた。それで二人がいいならご飯作るけど?」
「私は食べてみたい!伊吹さんの料理!」
「俺も食ってみたいな。」
「じゃあお願いしたいんだけど、食材とか足りる?もし無いなら俺が買って来るけど」
「いや、大丈夫。明日の分使えば足りるから」
「なら良かった。じゃあ頼むわ。ありがとうね」
「うん。了解」
そう言って伊吹さんは、キッチンの方に向かって行った。
一時はどうなることやらと思ったけど何とかなった。良かった。
だが唐突に菜々美が立ち上がって、伊吹さんに付いていった。
「じゃあ私も伊吹さんの料理作るの手伝う〜」
げぇ!やばい本当にまずい。
前に菜々美の料理を食べた時、見た目は本当にメニュー道理の様な見た目をしていたのに、味の方が本当にデンジャラスだった。
俺は瞬時に和真にアイコンタクトをした。
そのアイコンタクトの意味を察して、和真は菜々美を呼び止めた。
「ちょっと待って菜々美。まだ和真が分からないとこあるらしいから、それ教えてやってくれない?」
「あーやばい。そういえばさっきの問題の続きのやつ、すげぇ難しそうだったんだ」
「あ、確かにまだ続きだったね。でも伊吹さん1人で大丈夫かな?」
「え?うん。私の事は気にしなくていいよ」
「じゃあ和真が手伝ってあげて。私が彩斗教えるから」
「おう。分かった。ありがとうな菜々美」
そして俺と和真は、助かった。と心の中で思った。
俺と菜々美が勉強をして少しの時間が経つとキッチンの方から食欲をそそる匂いがしてきた。
そこから1時間弱の時間が経つと和真が俺と菜々美を呼びに来た
「料理出来たぞ。てか彩斗マジ伊吹さんやばいわ」
「んんん?何がやばいの?和真?」
「いや。見れば分かる」
俺と菜々美もテーブルに向かった。
そして菜々美が目を見開いて料理を見てる。
「こ、これ伊吹さんが作ったんだよね」
「そうだけど」
言い方はアレだが少し声のトーンが上がってる
「やば」
伊吹さんの料理を見た菜々美の語彙力が死んでる。
こんな驚く菜々美見るの初めてだ。
「俺もびっくりしたわ。ちょっと目を離した途端に何か出来てるんだぞ!マジエグい」
俺も最近見慣れてたけど、普通に高校生がこんなクオリティーの高いの作ってるって考えたら、凄すぎるよな。
「3人とも冷めないうちに食べてよ」
伊吹さんがそう言うとみんな席に座った。
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