第8話
金曜日の放課後は、1週間の終わりだということもあって皆の顔色は比較的明るい。
でも今回の金曜日は、来週の水、木、金にテストがあるため、空気がピリついてる。
まぁでもこれも毎回の事だと思う。
そりゃああちこちの、中学校時代トップが集まる学校ピリつかないわけない。多分。
今までテスト前の雰囲気とか、意識したことないから知らんけど。
まぁそんな余計なことを考えても、勉強時間減るから早く帰るかと思って立ち上がると、さっき教室から出て行った和真が、うるさい奴を連れてきた。
「彩斗!明日10時に行くから絶対起きといてよ!」
菜々美の声が教室中に響く。
安定のうるささだ。
「そんなに大きな声出さなくても聞こえてるよー」
「そうだよね。エヘヘ」
「彩斗今回は厳しく教えるからな。覚悟しとけよ」
「うん。わかってる。2人ともありがと」
「げぇ、彩斗が素直にお礼言うとなんか気持ち悪い」
「だな」
「おい!そこの彼氏同意しない」
そう俺が言うと和真は「なんで俺だけ」とつぶやく。
その理由は簡単。俺も少し気持ち悪いと思ってしまったから。
だけど同意されるのはなんかヤダ。
俺はいつもと同じように家に帰り、伊吹さんのとてもとてもおいしいご飯を食べた後、伊吹さんにとてもとても厳しく勉強を教えてもらっていた。
「はぁー疲れた!もう無理。一旦休憩ください」
「もうまだ2時間しか経ってないのに。じゃあ少しだけね」
「あざっす」
俺はそう言って床に倒れこんだ。
寝転んで目を瞑り少し考える。
こんなに集中力なくて、留年を免れるのか心配になってきた。
「伊吹さん。今回のテストみんなよりいい点とれるかな?」
「ん?いきなりどうしたの?皆よりいい点数取れるより留年しない事が大事でしょ」
俺がいきなり変な事を言ったので、伊吹さんはひょこんとした顔でこっちを見てくる。
「いや、なんとなく聞いてみただけ」
「そう。‥‥‥池田君は自頭はいいと思うよ。理解もすごく早いし。でも積み重ねが違うかな。池田君は最近になって勉強をし始めた。でもね全員では無いにしろね、みんな1年間努力してると思うの。だからそう簡単に勝てないかも」
「だよな。正直に言ってくれてありがとうな」
やっぱ考えが甘かったよな。
まぁ留年をしないようにする事が1番大事だし、切り替えよう。
そしてその後も勉強は続いた。
セットしたアラームよりも、2時間前に起きた。
理由はカーテンから漏れてきた日差し、それか勉強時間が足りないことによる焦り。
まぁ正直特に理由はわからん。
まだ覚醒しきれてない脳を起こすために歯磨きをして朝飯を食った。
伊吹さんが来る前は、朝飯なんてロクに食った事が無かったが、健康な食事をしているおかげか、自然と朝にお腹が空くようになった。
よし!勉強するか。
意気込んでいつも勉強している机に向かうと、昨日の夜使ったノートやら教科書が開きっ放しだった。
そう言えば昨日の夜は、伊吹さんが帰った後、風呂に入って倒れるように寝たんだった。
この前まではある程度汚くても何とも思わなかったのに、今ではこの程度でも憂鬱になる。
俺は手っ取り早く片付けて勉強を開始した。
勉強開始してどのくらい時間が経ったのだろう。
そんな事を考え始め集中力が切れ始めた時に、ピンポーンと音が部屋中に響き渡った。
げぇもうそんな時間か。
俺は慌てて着替えて外に出た。
「悪い。遅くなった」
「おそ‥‥‥」
扉を開けると菜々美が何かを言うのをやめて、2人が少し驚いた様子で、こっちを見てくる。
「なに?どうかしたか?」
「いや、久しぶりにその髪型の彩斗見たから。少し驚いた」
「本当に、学校でもそれで来ればいいのに」
今日は休日なので、髪は下ろしていない。てかそんなに似合わないの?
やっぱり人と会う時は、今度から髪の毛しっかりと下ろそ。
「まぁそんな事一旦いいから!勉強しよ!彩斗馬鹿なんだから」
「おう!そうだな。じゃあ入ってくれ」
「彩斗が菜々美に、馬鹿って言われたことスルーしてる」
そして2人は部屋の中に入って行った。
リビングの扉を菜々美が勢いよく開けると、また2人が驚いた顔をした。
なんだよこいつら、朝から表情コロコロ変わりすぎだろ。
「なに?今度はどうした?」
「「彩斗の部屋が綺麗」」
「え!?」
「「彩斗の部屋が綺麗」」
「いや、聞き逃したとかじゃなく、俺の部屋が汚くないのそんなに驚くこと?」
「いやいや前来た時とか、なかなか汚かったよ」
「彩斗お前熱でも」
「ない」
でも確かに俺の事よく知ってるこいつらからしたら少し違和感があるのかもしれない。
でも伊吹さんの事は、気づかれないようにしないと。
「前は唐突に家に来たから、掃除する暇無かったんだよ。今回は前日に掃除しといたの」
実は伊吹さんが来るから自主的に綺麗にしてるだけだが。
「あーあそう言ういう事。彼女でもできたのかと」
「俺なんかに彼女が出来るとでも?」
「全然出来そうだけどね。気つかえるし、少し口悪いけど優しいし周り見えてるし、スタイル悪くないし、顔も和真より少し低いだけだから。ねえ和真」
「顔は好みだからわからんけど、彩斗はモテると思うぞ」
正直俺が「彼女なんかできると思うか?」と聞いて「できない!」みたいに返されると思っていたから、普通に褒めてきてすげえ恥ずかしい。
「ど、どうも」
「あ!彩斗が照れてる!」
「うるせぇ。もう早く勉強しようぜ」
「よし。やるか!」
「OK」
その後少しだけ3人で話合って、評定的に危ない数学と英語をやることになった。
ちなみ和真が数学で、菜々美が英語の担当になってくれた。
片方が教えてくれて余っている時は、俺と伊吹さんがいつもご飯を食べてる机で、勉強することになった。
「まず数学な。じゃあまずここら辺からやってくか」
「おう」
まずは基礎の方からやってくみたいだ。
よし、ここは前伊吹さんとやった場所なので、スラスラと解くことが出来た。
「へえー意外に出来るじゃん」
「だろ!まぁ俺も流石に勉強してるからな」
伊吹さんに教えてもらってなかったらこんなに出来ないけど。
「そうか。じゃあこの問題はいけるか?」
そう言って和真が指を指してきたのはまだ伊吹さんともやりきれていないものだった。
「え~と」
「分からない?」
「はい。分かりません」
そう言うと和真は半笑いで「じゃここからやってくか」と言ってくれた。
そして和真の教え方は物凄く上手だった。
どんな感じかと言うと、俺の頭に?が浮かんだら、すぐにその?を消してくれるような感じで、自分が勉強できるみたいに、錯覚させてくれる感じで楽しい。
3時間の間に、少しの休憩を挟みながら和真と勉強をしていると、集中力が切れた菜々美がこっちに向かって来た。
げぇ、来た。
「うわ!今彩斗げぇなんでこっち来たみたいに思ったでしょ!」
「思ってねえよ。てかなんでこっち来た」
「彩斗口に出てるぞ」
あ。しまった。
「やっぱり思ってるじゃん!もう1人で勉強するの疲れた」
「そうか。別に勉強しなくてもいいと思うぞ。でもまた菜々美は俺に負けるかもな」
和真が菜々美にそう煽るように言うと、頬っぺを丸くして「絶対負けないもん」と言ってさっきまでいた、机に戻って行った。
流石和真だ、菜々美の扱い方が完璧だ。
また静かな環境に戻り、黙々と勉強を進めていった。
「よし流石にここまでやって、彩斗がしっかりと復習すれば、そこそこの点数は取れると思うぞ。しっかりと復習すればな。まぁそれは明日か」
「分かってるよ。ありがとな和真」
「おう!」
そうして和真との5時間の勉強が終わった。
疲れた。本当に疲れた。
「じゃあ少しきゅうけ……」
俺がそう少し小さな声で呟こうとすると、待ちに待ってました!のように菜々美が来た。
「やっと私の出番が来た!早速やっていこう!」
「えっと菜々美さん?大変申し訳にくいのですが、休憩の方は?」
「そんなのあるわけないじゃん。何言ってるの?」
お前が何言ってるの?菜々美さん?本当に教科書開こうとしてるけど。マジで休憩なし?
やっぱりぶっ飛んでやがる。
「ってのは冗談で、15分だけ休憩時間にしてあげる」
15分か、まあ無いよりはましか。
「ありがとうございます」
そう言って倒れるように横になった。
そして15分が経つとまた勉強が始まった。
菜々美の教え方は和真とは違っていて、圧倒的感覚派で教科書道理では全くない。
だがある程度菜々美と関わっているので、菜々美の感覚はある程度分かる。
だから菜々美の教え方は凄く分かる。
和真の時は、分からないものが分かるといった楽しさがあったが、菜々美の教え方はこんな考え方もあったのか、といった面白さがある。
「うん、うん。理解できが早くて助かる。てかなんでそれで、留年しかけてるの?」
「多分俺の理解が早いとかじゃなくて、菜々美の教え方がうまいからんなんじゃね?」
「まぁ、それもあるけど。理解力は結構高いと思うけどね。あ、でもサボりすぎて、単語忘れ過ぎだけどね」
最後のは聞かなかった事にして、伊吹さんにも同じ事言われたな。
でも慢心したら駄目だ。
しっかり勉強しよ。
それと、英語は最終日だから、単語は気合で覚えよう。
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