第百三十三話 いい子すぎるのも
話がそれてしまった。そういえば今は『きんきゅーおねーちゃん会議』を開催している最中だった。
とりあえず、聖さんが赤点を回避するための手段を考えないと。
「これからテストまでは生徒会のお仕事はないということですか?」
「うん。みんな勉強するみたいだよ~」
「……お姉ちゃんもお勉強する期間ですよ」
他人事だなぁ。聖さんはそもそも勉強をしてこなかったのだろう。自分が当事者である実感がやや薄いように見えた。
「そ、そうだった! 私も勉強……うぅ、やだぁ~」
「ファイトっす! これでも食べて元気だしてくださいっす」
「うん、ありがと……お菓子がないとやってられないよぉ」
そう言いながら、聖さんは久守さんと一緒にお菓子をパクパク食べていた。ひめはもうお腹いっぱいなのか、残りは全部二人に譲ることにしたのだろう。まったく手をつけなくなった。
うーん。明日はもっと多めに持ってこようかな?
ひめは遠慮する性格なので、数に限りがあると身を引いてしまう。そのあたりも配慮しようかなと、考えていたところなのだが。
「それでは、放課後はこれから毎日勉強会ですね」
「え? でも、明日から居残りってできるすか? テスト期間なんで部活も休みになるっす。たしか、施設の利用許可が下りないとかなんとか聞いたっすね」
……それもそうか。
部活動すら休みになるのだから、学校に生徒が残るのは厳しいのだろう。
「生徒会も休みになるし、そもそも居残りが許されてないのかな」
「……いや、でもそういう規則はなかったと思うなぁ。生徒会は自主的にお休みしているだけで、まだやらないといけないことがあったら活動できたと思うもん」
さすが生徒会副会長の聖さん。
規則的な問題ではなく、学校側の意向と考えた方がいいのかもしれない。
まぁ、学生なんだからテストに集中しなさいという言い分はよく分かる。
決して間違えたことを言っているわけではない。
「勉強場所です、か。わたしたちの家……だと陽平くんの移動時間がかかってしまいますね」
「俺は別に気にしないけど」
「いえ、わたしが気になっちゃいます。お姉ちゃんの面倒を見てもらっている上に、そこまで負担をかけるのは心苦しいです」
ひめなりの筋の通し方、なのだと思う。
たしかに星宮家に通うなら、往復で一時間は考えなければならない。その上、聖さんに教えることに勉強時間が取られるので……自分の勉強時間が減るのは、なるべく回避した方がいいだろう。
聖さんに教えたことで俺の成績が下がる、なんてことになったらひめに罪悪感を与えてしまいそうだ。それは回避したいので、俺も頑張る必要がある。
なので、理想を言うなら移動時間はなるべく削れた方がありがたい。
「じゃあ、ファミレスとかファーストフード店がいいのかな~?」
「飲食店は……少し騒がしいかもしれません。あと、お姉ちゃんの食欲を止められる気もしません」
絶対に勉強より『食』に集中するだろうなぁ。
飲食店は俺も賛成しないかもしれない。
「俺の家……は、そもそも狭いか」
学校からも近いし立地的には好条件。
ただ、ひめがやはり乗り気ではない。
「広さが問題ではないと思います。わたしとしては行きたいのですが……負担をかけているようで、やっぱり心苦しいです」
「気を遣ってもらってごめんね~」
二人とも、いい人なのである。
俺のこともちゃんと考えてくれているからこそ、重荷にならないよう一線を引いてくれていた。
しかしながら、現実問題としてどうしたらいいべきなのか。
三人で悩んでいると……意外なことに、あの子が打開策を提示してくれた。
「規則的に問題ないなら、先生に許可もらえばいいんじゃないすか? 星宮先輩に腰が低い教師陣なんで、たぶん余裕っすよ!」
……俺たち三人は、少しいい子すぎたのかもしれない。
久守さんの少しずる賢い発想は、俺たちだけだと絶対に出せないものだった――。
//あとがき//
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