第5話

『キャアアアアアアアッ』

「ヒッ…!!」

何気なく普通の楽しい作品だと思って観ていたのはホラーだったらしい。

急いで別の番組に変えたけど、よりによって一人の時に観てしまうなんて…。

変えた番組はもふもふころころした動物番組。

なのに…さっきの映像が頭から離れない。

「うー…」

クッションを抱えてソファに倒れ込む。

本当に苦手なのに、怪しいなって思った時に変えればよかった。

今日はルカは朝までいないし、ノアも遅いと言っていた。

誰もいない部屋でどうやって紛らわせようか…。

考えていたら玄関の扉が開く音がした。

「え…?」

ノアが帰ると言っていた時間にはまだ早過ぎるのに。

恐くてソファの影に隠れるけど足音が近付いて…

「ただいまー、早く帰れたんだけど?」

「ノア…」

姿を見たら驚いたのとホッとしたのとで力が抜けた。

「どうしたの?」

聞かれてホラーを観てしまった事、まだ時間じゃないのに帰ってきた事に驚いた事。

話してるうちに安心したけどまた怖くなってきた。

「あー…今日やるって言ってたな。観ちゃったか」

撫でられて抱きしめられて、少しずつ落ち着いてくる。

「この世界でも夏はホラーなんだね…」

疲れて帰ってきたはずのノアに甘えるのは申し訳ないけどしがみつく。

今は離れたくない。

「そうだねぇ、祈咲の世界でもそうだったの?」

こくんと頷く。

あの、夏はホラーっていうのはなくなってしまえばいいのに。

「あ、ほら、仔猫が悪戯してるよ。可愛いな」

言われて観てみると飼い主の足にじゃれついている仔猫が映っていた。

ズボンに爪が引っかかって慌てているのが可愛い。

「着替えてくるから、後で一緒に何か楽しいの観よっか」

そういえば帰ってすぐだった。

「うん」

ノアが離れる。

少し不安になるけどすぐまた一緒にいられる。

その後は動物番組とか綺麗な景色を観る番組を観て、ゆったりとした時間を過ごすうちに、恐怖は薄れていった。

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