第一章【哀華の連合】
第8話 連合襲撃
『マスター、起きてください。緊急事態です…休止状態を解除し、応戦状態へと移行しています』
そんなカタリナの言葉に反応して即座に身体を起こし、飛んできた砲弾を掴んで遠目に見える怨骸に向かってぶん投げる。
ぶん投げた砲弾は見事に平級怨骸…いわゆる雑魚怨骸に直撃し、沈むのが見えた。
急な襲撃…ゲームではこの時期に襲撃があったなんて記されてないから油断してた。この世界は紛れもない現実だと言うのに。
「…カタリナ、何があった?」
『数分前から突如として怨骸襲撃に会いました。数は平級8匹、騎士級1匹、男級2匹、子級1匹の計12匹。おそらく連合艦隊かと思われます』
(…第二章の負けイベじゃねぇか!)
平8、騎士1、男2、子1の計12。コレはチュートリアルとも言える第一章が終わって次の第二章冒頭でこの艦隊に襲われる描写がある。
そして大体1〜3匹、大きても5匹程度しか一度に出て来なかった一章と比べ、唐突に現れた12匹と言う数はあまりにも多く…この襲撃によって一章で仲間として共に戦ったいわゆるチュートリアル艦兵達は沈められたり連れ去られたりして壊滅状態になる。
第二章:哀華の連合
…初心者司令でありながらも早い段階で仲間を失う悲しさを経験し、乗り越えて襲撃してきた連合艦隊を打ち破る章である。
まぁ、そんな負けイベこと怨骸連合なのだが…被害度外視で暴れれば連合は破壊できる。鎮守府の破壊してしまうかもだが、子級が旗艦をする程度の連合ならば鎧袖一触だ。
ゲーム内でも戦歴がチートと言われた初代艦兵と性能がチートと言われた怨骸艦兵武装:カタリナの公式チートコンビからしたらこの程度は即座に破壊出来る。
…出来るのだが。
俺の後ろでスヤスヤと寝ている令奈を見る。
(…流石に見殺しにはしたくないなぁ)
今では生き残りが数少ない一桁ナンバーの一人であり、親友だ。死なせたくないと思うのは当然だし、ましてや怨骸共に連れ去られるのはもっての外だ。
と言うか令奈も一応艦兵と言う名の軍人なのだから襲撃にあったら飛び起きるぐらいはして欲しい…なにスヤスヤと寝てやがるんだコイツ。
一緒に戦ってくれるならまだしも、動かない味方を守る時ほど難しい物はない。守る物があると人は強くなるとは言うが、実際に守るとなると極端に選択肢を少なくさせられる。そんな中で俺が選んだ行動は…
(令奈の艦兵武装をパージ、一応収納しといて…よし)
「カタリナ、海に入ったら即座に潜水モードに移行しろ」
『了解、マスター』
36計逃げるに如かず!こう言う時に有効な策はやはり逃走である。
敵前逃亡は重罪?知らんなぁ、だって今の俺はフリーの艦兵で軍人では無いのだから。
邪魔になりそうな怨骸共を沈め、出来た隙を使って令奈を担いだまま思いっきり水中にダイブする。
艦兵ならば窒息の心配は無い…初代艦兵である俺にその機能があるのだからNo.5で後輩艦兵の令奈にもその機能は必ず受け継がれているのだ。
受け継がれてないのはNo.2の戦闘狂ぐらいだ。
そんな訳で俺はカタリナの性能に物を言わせた潜行速度で降り注ぐ爆雷の中をスイスイと進んでいき、怨骸共から距離を離していく。
やはり水中は便利だ…通常の怨骸達は大抵水中適用してないから爆雷で攻撃するぐらいしか出来ないのだ。とは言え潜水モードは非常に脆くなるから爆雷に当たったら大ダメージを受ける可能性があるが。
…まぁ、この回避にも慣れた物だな。初代艦兵時代の記憶と技術があって良かった。無かったら俺はここで死んでた可能性が高いからな。
「…ふむ、お返しだ。受け取れ…怨骸共」
カタリナからの十数個にもなる魚雷を一斉に怨骸に向かって発射する。通常の武装なら3〜6連装くらいなのだが、その制限が無いのが怨骸化艦兵武装の良いところだ。
しっかりと魚雷が発射された事を確認し、俺は全出力で鎮守府から離れていく。
…そして鎮守府の方から非常に大きい爆発音が聞こえるのであった。
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護衛艦兵side
「うへぇ…なんで私がお偉いさん達の護衛をしないといけないんですか…」
「しょうがないじゃない、どうしても司令の死亡を確認したいって言うんですから」
「なんでですか…なんでそんなに司令を目の敵にしてるんですかお偉いさん達は」
「さぁねぇ?先輩が沈んだ責任を司令に全て押し付けたいんじゃないかしら」
「…先輩が沈んだのってカタリナ武装を修理出来なかった本土の人達のせいじゃないですか」
本当にやる気が起きない…私達の戦友であり頼れる先輩だった令奈司令に罪を押し付けようとしてる上層部が気に食わない。どうせ民衆の支持を保つ為にやってるんでしょうけど…艦兵たちからの印象は最悪だ。
それに薄々気付いてるけど上層部の奴らって私達前線艦兵達を恐れてるし。おおかた人間が持ち得ない能力を持ってその力を存分に振るう私達が謀反を起こさないか怯えてるんでしょ。本当にしょうもない…そんな事してる暇は怨骸達が居る限り無いって言うのに。
「こんな事をしてる暇があったらお偉いさん達も艦兵になって怨骸を倒しやがれってんですよ」
「そうは言っても上層部の人達は適性がないじゃない。無理な話なのよ」
「はぁ…あー、もぅっ!先輩が沈んでなかったら愚痴を聞いてもらってたのにぃ!」
「そうね…上層部の人達も先輩が沈んでからちょっと動きが怪しいし……不穏ね」
あー…分かるわぁ。なーんか上層部の人達の動きって怪しいんだよねぇ。常に自身の周りに護衛艦兵を置いてるし、私達【帰還組】を隔離する様にしてるし、かなりの頻度で本土の艦兵が監視に来るし。
と言うか私達が外出許可を貰えないのがあまりにもおかしい。私達が外を出れるのは今みたいな任務中くらいだ。
「ほら、もうそろそろ鎮守府よ…此処からは接敵率も上がるんだから気を引き締めなさい」
「分かってるよそれくらい…と言うか一応私の方が先輩なんだかr———」
『ドガアアァァァァァァアアアアン!!!』
「何事⁉︎」
「…鎮守府の方から聞こえたわね」
「…っ!全速力で行くよ!」
「あっ!待ちなさい!」
私は状況を確認する為に全速力で鎮守府を目指す。
他の護衛任務に付いてた帰還組の艦兵も同じ考えだったのか鎮守府に向かって速力を上げている。
そしてたどり着いた鎮守府では…十数匹はあるであろう数の怨骸の死骸と、完全に破壊された埠頭があったのだった。
…一体、ここで何が?
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