第6話 再会…?

 大陸流しになった司令官side


「…司令官、着きましたよ」

「あぁ、分かってるさ」


 廃棄した鎮守府に上陸する。…良かった、壊されてなくて。


「それでは司令官…さようなら。生きてたらまた…」

「あぁ、さようなら。新しい配属先でも頑張るんだよ」


 護衛をしてくれた艦兵が本土へと引き返していく。一応私自身の艦兵ではあるから本土には戻れるのだが…まぁ、私がそんな事をしないとあの艦兵も分かってるから1人にしてくれたのだろう。


「…さて、思い出巡りとでも行こうか」


 誰も近くにいる訳でもないのに、側にいる誰かに語り掛けるかの様に呟きながら歩き始める。


 まず辿り着くのは出撃する場所である埠頭。愛も変わらず波が打ち付けてきており、心地良い音を響かせている。

 ここでまったりとしながら艦兵達と談笑するのは楽しかったものだ。まだまだ幼い艦兵がイタズラで海に落とそうとしてくるのは勘弁して欲しいが。いくら艦兵であってもビックリするのだ。


 そんな風にじっくりと眺めていたからこそ気付けた。本来あるはずの無い痕跡がある事に。


「………血痕?」


 まるで海から誰かが這い上がって来たかの様な血痕が埠頭に付着しており、引きずって移動したと思われる血痕が鎮守府へと向かって伸びている。


「…おかしい。こんな派手な血痕が残る傷を受けた場合は海岸で治療するはずなのに何故こんな所に…それにこの方角は病院じゃないぞ」


 むしろこの方角は…工廠がある所だ。怪訝に思いながらも血痕を辿っていくとその血痕は工廠に向かってまっすぐ伸びている事が分かり、尚且つ移動先に一切の迷いが無いのが見て取れる。


「怨骸…では無いな。むしろコレはこの鎮守府を知り尽くしてるはずだ。工廠内の物の把握すらしている。………まさか…!」


 急いで別の道へと続いている血痕を辿ってみる。すると病院に辿り着いた。…あぁ、ちゃんと自分で治療をした痕跡が残ってる。そしてここからは血痕が途切れているが、それはむしろしっかりと止血を終えて生きている事を指している。


「まさか…まさか…!生きているのか…!」


 宿舎を回ってみる。

 …部屋に出入りした痕跡が残ってる。アイツなら現状の確認に来たのかもしれない。となるとより情報が集まってる場所は…



 ………そして訪れた司令室。


「あぁ、やっぱり生きてたんだな、親友…」


 読み漁られた痕跡が残っている書類の数々。そして親友特有のちょっと独特な整理がなされている。そうか…生きてたんだ。


「良かった…生きてて良かった…!なら私はここであいつの帰りを待とう。あいつなら必ず…ここに帰ってきてくれるはずだ…!」


 生を諦めてた私の中で生きる希望が芽生える。あぁそうさ、アイツがこの程度で死ぬわけがない。まさに驚異的な生命力だ。


 …だが、一つだけ不安もある。


「…どうか、怨骸化だけはしてないでくれよ、親友」


 人間…もとい艦兵の怨骸化と言うのが存在する。

 原因は不明なのだが、何らかの要因によって艦兵が怨骸化すると言う事象が過去に起きた。


 そしてその怨骸化によって誕生する怨骸は最低でも騎士級以上となっているのだ。

 もし、もし初代艦兵が怨骸と化してしまえば…それは今だ観測されていない王級となるかもしれないのだ。


「人類の希望の為にも…そして再開を願う私達のためにも…どうか、どうか怨骸にならないでくれよ…親友」


 そしてそのままその日は終わりを告げ、暁時となる時…鎮守府内に敵襲の警報が流れるのだった。


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『敵襲!敵襲っ!8時の方向に敵軍を発見した!鎮守府に居る艦兵達は即座に迎撃に当たれ!』


「…やっべ、忘れてた」


 カタリナの機能を色々と試しながら鎮守府へと目指していたら、ついつい日を跨いで夜明け頃になってしまっていた。

 そして鎮守府に近づくにつれて聞こえてくる警報を聞いて忘れてた事を思い出した。


「怨骸化装備着てると警報鳴るんだった…」


 鎮守府に設置されている特大レーダーこと、敵襲検知器は【怨骸の武装】を検知して警報を発する仕組みだ。そして怨骸化艦兵武装も立派な【怨骸の武装】である。


 つまり…鎮守府に向かえば俺は敵判定となるのだ。


「…まぁ、大丈夫か。鎮守府には人っ子1人も居なかったしな。警報がなっても本土に居る人達は鎮守府が堕ちたとしか判断しないだろうし」


 もしあったとしても奪還作戦が組まれるか組まれないか程度の違いしかない。作戦の前に調査があったな。


 そんな風に思いながらも特に気負う事なくサイレン鳴り響く鎮守府へと近づいて行く。

 うーむ…やはりここが帰るべき実家って感じがするな。長年ここで働いて来ただけある。


 そして鎮守府へと上陸し、歩いていると…



 ………そこには涙を流している親友が居たのだった。

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