第4話 取りに来た武装
「えーっと…確かこっちだったよな?」
二匹のペアで行動していた怨骸を斬り沈め、位置を確認する。主砲や魚雷は今は使わないでおく…弾薬も魚雷も無限では無いからな。
と言う事でこの世界で培って来た戦闘技能を存分に扱い、怨骸を斬り伏せて行く。一応前世の記憶も思い出した事で怨骸に対しての恨みは少なくなったとは言え、無くなったわけではないからな…普通に容赦無く沈めれる。
そして進んでいるうちにとある小島が見えてきた。
確かあそこは過去に放棄された艦軍基地だ。色々と設備が整ってたのだが、戦況の悪化のせいで放棄せざるおえなくなったと言う過去がある。
(…流石に来るのが早かったか)
そんな基地には、先程斬り沈めていた怨骸共とは明らかに格が違う様な見た目をした怨骸が彷徨いていた。
子級怨骸…子級と言われると弱く感じられるかもだが、子級の子は子爵の子だ。先程までの弱い怨骸からすると上官に当たる。
(…今は戦いたくないな。それにより上の等級の怨骸が居たら流石に勝てんぞ)
もし侯級や公級が居たら確実に死ぬ。伯級でもギリギリ逃げれるかどうかと言った感じだ。…汎用艦兵武装は初期装備なだけあって本当に雑魚相手にしか通用しないのだ。
と言う事で艦兵武装を解除し、そのまま海の中にドボンと潜っていく。艦兵になる事で受けられる恩威は様々なのだが、その中でも特徴的なのは艦兵武装の使用と水上での歩行と、水中での活動が可能と言うやつだ。
奇襲作戦とかをする為に追加された機能である水中活動。コレはその場凌ぎをする時でも結構使えるのだ。何せここら一体の海域の底には何処にでも肉片と機械の大地が出来上がっている。そのせいでレーダーとかの索敵器がことごとく使えなくなり、海底をまともに見る事が出来ないのだ。海上なら機能するんだがな…
て事で海底で肉片と機械で出来た大地に腰掛けながら小島を観察する。子級怨骸が見張りをしている事以外は特に変わらないが…だがその事実自体がヤバい。
(ありゃあ確実に侯級以上は居るだろうな…マジで今は近づいたらダメだな)
子級と言うのは雑魚怨骸達の上官でもあるが、どちらかと言うと伯級達の護衛と言う面が強い。
そんな子級が見張りをしてるならばおそらく伯級は確実にいる。そして近くに子級を置いてないのを見るに、多分伯級を護衛として置いている存在が居る。
…そこまで重要な事だったのか、アレって。
ここがゲームで描写されるのはもう少し後。つまり今怨骸達があそこで活動しているのはゲームで示唆されていても描写されていたわけではない。まぁどれほど重要なプロジェクトだったかを知りたい節もあって早めに来たのだけれども。
そして日が沈み始め、暗くなってきた頃に基地からとんでもない圧を放つ怨骸共が離れていくのを確認した。…間違い無い、あの怨骸は確実に侯級以上だ。あの圧を伯級以下に出せるわけが無い。
そんな奴等が撤退していくのを見送って数刻後、戻って来ないのを確認してから俺は基地へと上陸する。
出来るだけ音を立てない様に…
(…よし、大丈夫だな。誰にも見つかってない)
そそくさと近場の建物に隠れ、周りを確認する。
…子級怨骸は撤退したらしく、居ても此処には男級怨骸が最上位だろうか?ここはゲームと同じだな…第一章のボスとして現れる男級なのが見て取れる。
そう、この廃棄された基地は第一章【希望を我が手に】の終着点だ。沈んでしまった初代艦兵の意思を継ぎなさいとか言う話だったはずだ。
前世を思い出す前の俺の意思なんて怨骸を滅ぼせってことぐらいしかなかったはずだが。
そんな事よりも怨骸達に見つからない様に基地の地下へと入り込む。どうしても怨骸と対面する事が避けれない場合は暗殺が如く静かに素早く殺害しておく。音で気付いた男級と戦う事になったら困る…汎用艦兵武装でも戦えない事はないが、もし撤退した侯級以上の怨骸が戻ってくる様な事態になったら取り返しが付かない。
と言う事でひたすら慎重に、できるだけバレる事がない様に動き…ようやくとある部屋へと辿り着いた。
「…あった。やっぱり怨骸共はコレに手を出していたか」
そこにあるのは【怨骸化艦兵武装】。とある艦兵武装を怨骸達が改装を施した事で出来る特殊な装備だ。ゲームだとイベントドロップとかで手に入る種類で優秀な装備が多い。…優秀な代わりにデバフが掛かったりと呪いの装備感があるが。
そんな怨骸化艦兵武装の中でも、プレイヤーが必ず手に入れる武装がある。
それが今俺の目の前にある【怨骸化艦兵武装:カタリナ】。………俺が艦兵として長年愛用してきたカタリナが改装された装備だ。
「…起きろカタリナ、仕事の時間だ」
懐かしいながらも変わり果てた専用武装に手を触れる。本来の艦兵武装はどれもが身体に取り付ける武器防具だが、怨骸化艦兵武装は全てオーブの様な形状をしている。
そんなオーブ状のカタリナを手に取り…カタリナは俺の中に入り込んでいくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます