青く燃える勇気

「花。あのね話がある。」家に帰ってすぐにラインした。その返事は予想通りOKだった。


次の日、花の家に呼ばれた。花のご両親には会ったことがことがなかったから緊張してピンポンしたら、仕事に行っているらしい。

「…花、あのね、えっと」

花の部屋は静かで、昨日の自信が薄れてしまい、なんて言い始めていいかわからなかった。でも逃げることはしたくない。

「あのさ、私女優になりたいって昔から思ってて、それで最近悩んでるんだ。だからね、可愛くていつも明るい花に嫉妬、してたの。どうしていつもそんなに明るく笑えるのって、花は何も悪くないのに勝手に羨ましがってた。それで、花といるのが辛く感じることがあって、ホントごめんなさい。怒っていいよ。」

「謝られたら謝りにくいじゃん。」

「えっ」突然花の真剣な声が降ってきた。

「うちも同じだから。あのね、うちやりたいことがわからないんだ。いつも周りに流されて、とりあえず何となく生きてるの。だからね、えっと、その………あぁ、ほんとごめん、ごめんなさい。」

「えっ」

「うち、ことが羨ましかった。医学部進学っていう目標があって、いつも必死になってて。うちには頑張れることがなくて、だから…」

「ふふ。」

「…こと何で笑うの、真剣に話してるのに」

「違うの、ごめん。花が同じ悩み抱えてるのに親近感みたいなの抱いちゃって。なんか、おんなじなんだって思ったらちょっと心が軽くなるって感じがしてさ。」

「こと…」

「花、私やっぱり花になりたいな」「ふふ、もう、だ、か、ら!うちはことの方が羨ましいんだって!!」

いつも通りの花のテンションと言葉に笑いが止まらなくなっていた。

「ねえ、こと。私、ことの夢応援するよ。」

「え、」

「一回親に話してみたらどうかな?怖いならうちも一緒にいくよ。」

「っ………。ありがとう、でも自分で伝えないと。」

「やっぱり、そう言うと思った。ことは真面目さんだもん。」

「真面目…?」

「うん。覚えてる??うちが高2で一回ぐれたじゃん。あの時、ことはうちのこと絶対に馬鹿にしなかったし、唯一真剣に話を聞いてくれたんだよ。こんな良い友達、他にはいないよ。ことが真面目に話聞いてくれたから、私ちゃんと生きていこうって思えたんだよ。ことの真面目さがうちらをつないでくれたんだよ。だからうちはことが好きなの。」

「っ…。」私はずっと、中学生の時に友達に言われた「真面目だね」言葉が嫌だった。でも、花の一言で、自分の真面目さを少し好きになってもいいような気がした。「ありがとう。」

花に抱き着いたら、あったかい腕で花も抱き着いてくれた。


その夜、私は決心した。お母さんとお父さんにちゃんと告白する、もう、逃げない。

「今ちょっといいかな。」

「どうしたの?」「ごめん、こと後でもいいか」いつもなら、いい。でも今だけは…

「今じゃなきゃだめ。ごめん、今言いたい。決心が揺らがないうちに。」

それから、私は今までの思いを全部伝えた。うれしいこと、辛いこと、悩んできたこと。成瀬君と花のことも伝えた。二人は初め、何か言いたそうな顔をしたけど、私の話を静かに聞いてくれた。

「女優って生きていくのが大変なんだぞ。厳しいし、今よりもっと悩むと思うぞ、それでもいいのか。」

話し終わるとお父さんが静かに言った。反対されることは覚悟していた。だけど、花が私の真面目さを褒めえくれた。成瀬君がまっすぐなのがいいって言ってくれた。私は私らしく思いを伝えるんだ。

「どんな道に進んでも悩みはきえないでしょ。どうせ悩むなら、真剣にやりたいことやって悩みたいの。だから、挑戦してもいいかな。」

「どうせやるなら、本気でやりなさい。お母さんは今まで通り応援するから。」

「っ…。」

今までお母さんが心から応援してくれてないと少しでも思った自分に「ばか」って言ってやりたくなった。私は改めて、幸せ者だと感じた。お母さん、お父さん、大好き。

花、成瀬君、勇気をくれてありがとう。


  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る