第1話 誘い
学校…。
小さな箱に幾人と収められた特定の環境。それは私にとって、無為な時間を過ぎる不必要な環境であった。
夏休みが終わり1年生としての時間は残り半分を迎えようとしていた。入学して友達が誰1人できなかった。別に残念ではない。小学生の頃から無口で人と喋るだけで紅潮してしまう。人前に立つことすら命を張るくらいの緊張が伴う。放課後は何もなく、ただ自宅で大好きな小説をじっくり読み耽ることが毎日の楽しみだ。そんな孤独な私には都合がいいのだ。
ある日の放課後。窓から秋風が梵。1番後ろの窓側で机に座り1人本を読んでいると、こちらを人が近づいてくる。足音がリズムよく向かう。緊張がジリジリ登る。1人、いや、2人。真横まで近付き彼女らは口を開く。
「あのー。」
パタっと反応するように本を閉じる。すぐさま相手の顔を見てみる。2人とも私と同じショートカット。焦って髪型が先に目をよぎった。目は泳ぎながらもいざ顔を直視する。目が合わさる。知らない顔。彼女らは別クラスか。背が私より高い。相手方も緊張した表情をしている。
「よかったら、部活に、興味ありませんか?」
「………あ、…え、嫌です。」
興味云々より断固拒否をしてしまった。誤りのある返答を口走ってしまった。隣に同様に立っている小さな彼女が答える。
「そう、ですか。」
そのまま片手に持っていた紙を私に手を伸ばし渡す。
「でしたら、いつでもいいので考えてみてください。」
私は震えながらも紙を手に取る。彼女達より断然私の方が緊張しているのは明白だ。普通なら渡す側が勇気をいるはずだ。
「それじゃ、失礼します。」
もう1人の背の高い方も失礼しますと言って2人はそそくさと教室を後にした。一呼吸して渡された紙面を眺める。女子バレーボール部。年次関係なく入部大歓迎。人数、6人。活動日、月火水金土。活動時間、2時間。現在は県大会出場を目指してます。右下隅には集合写真。皆んなして統一して同じ髪型。顧問は若い女性先生。なるほど。確かに私が推薦されたのが頷ける。さっき来た片方の背の高い子が断トツで身長が高い。あとは私より小柄である。どうやら試合で有利に使えそうな選手をリサーチして私に行き着いたのだ。まあ、運動は苦ではない。けど…、団体競技。それは必然的に他者と喋らなければ成り立たない。私には到底無理難題である。紙面を鞄の中のクリアファイルに入れて席を立ち教室を去る。長い廊下の窓から外を眺めると夕日が照らされ規則正しい街並みはオレンジ色に染まっていた。
そう、私には無縁。
しかし、どういう訳かあらぬ方向に進むとはこの時予想していなかった。
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