第2話 いざ、バレー部へ
部活ですら無理。ましてや、団体競技なら尚更。
けど、なんで入ってしまったんだろう。
あの後、自宅へ帰り、部屋に入り、早速鞄を開けファイルを取り出しその中から女子バレーボール部紹介の紙を取る。もう一度上端から下端までなめるように眺める。
「…私にもできるかな。」
これまで臆病風を吹かせて何もやらなかった。ただ小説という幻想に浸っていただけ。そろそろ現実を見ないといけない。でも、自信がない。いや、やってみよう!ダメなら辞めればいいし。
思いの外葛藤は短かった。
後日、再び学校の職員室にて担当顧問へ入部願いを伝えた。
「あら、珍しいね。えっと、1年生?」
「はい。」
顧問は3年生の一部のクラスの担任。普段学校では全く接点はない。緊張して目を合わせれない。俯き加減のまま沈黙が流れる。
先生は片眉を潜めて疑問の表情になる。
「何か、大事な話かしら?」
喉が痞えるまま口を開く。
「…いえ、じ、実は、これ。」
先日眺めたバレー部紹介紙を震えた手で見せる。
「あーーー。もしかして、うちの部活やってみたいの?」
こくんと頷く。
「だったら体験入部からがおすすめね。」
「た、体験?」
「そう。一旦入るかどうかは体験してみて、後で本人が決めるの。まあ、最初は見学してその後軽くボール触ってみたりとかかな。今日の放課後体育館でやってるから、いつでも来やすい時間で気軽に来てみて。」
「あ、はい。」
そうして、放課後。
ジャージ姿のまま恐る恐る体育館の扉を開く。声がする。ダンと地面に叩きつける音も。そこには男子バレーボール部と女子バレーボール部が全体半分ずつ使っていた。体育館ならではの独特な匂い。黄色と青の球が空中だったり地面に落ちたり上下にうるさい。
左側の女子バレーボール部を確認して、壁の端寄りから固く歩く。歩く自分に気付いたのか1人の部員が駆け寄る。こちらは長髪で結んでいる。美人ですらっとしたモデルみたく背が高い。なんか、美形な猫みたい。けど、写真には見当たらなかった人だ。それじゃあ7人?
「もしかして、体験入部?」
「は、え、はい…。」
「うわぁ、嬉しい!じゃあ、こっちへ。」
笑顔のまま彼女は顧問の元へ呼びかけた。
相手コートに球を下から当てて上げていた顧問は呼びかけに気付きこちらを向く。「遠藤先生!体験入部の方来てくれましたよー!」
顧問は遠藤先生と言うのか。今更ながら顧問の名前を知る。相手コートにいる6人に何かしら言い残して私達2人の元へ走ってきた。
「あら、来てくれたのね!ありがとね!じゃあまずは、今一緒にいる音湖さんとマンツーマンで見学と球触ってみるか?」
ねこ!?思わず隣の彼女を見る。彼女は驚いた私に気付いたのか答える。
「あー、あたしの名前だよ。音に湖と書いて音湖。あれ?てっきり知っているのかと…。」
「え、いや。はい。」
「ほら入学式でステージに登壇したよ。」
「えぇ、にゅうが、くしき?」
すかさず遠藤先生が答えた。
「もしかして入学式体調不良でいなかった?」
「え、まあ、はい…。」
音湖さんがふっと笑って言う。
「なんだ。そいうことかー。あたし、今年からこの中学校の生徒会長になったんだよ。」
「ウェ!せ、せいてた会長!?」
驚きの余り噛んでいた。
「そうそう!で、昨年から女子バレーボール部は6人しかいないから助っ人としているの。」
「助っ人…。」
ハッ!だから部員写真にいなかったのか!
遠藤先生が説明する。
「6人のままだと正式に試合に出れないの。それに試合当日、誰か1人怪我や病気で欠員になったら棄権と見做されて必然的に相手チームの勝ちになるのよ。」
「そうそう。だからあたしがいるの!」と自慢気に音湖さんは答えた。
「じゃあ私は練習の続きやるから、音湖さん。今日はお願いね!?」
「はい!」
そうして私達は体育館2階で上からコートを見学した。それにしてもここの体育館って広いし2階には席が沢山あるなぁ。
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