第10話
学校を出て二人で歩く。せっかくなら、やりたいことをやろう!という感じで、少し遠いけれど行けなくもない距離に駄菓子屋を見つけたので、地図アプリに助けをもらいながら駄菓子屋を目指す。
「あっついね。」
「暑すぎて溶けそうだね、大丈夫?」
「うん、平気だよ。二人で熱中症にならないように気をつけて行こ!」
途中日陰を見つけて、五分ほど休んで、また歩いていく。蝉の鳴き声とジリジリと照りつける太陽が夏本番を感じさせる。
それから十分くらい後。ようやく着いた駄菓子屋さんは、ひと昔前で時が止まっているかのようなお店だった。街のはずれにあるそこは、何かのワンシーンのようで、現実とは思い難い。まるで物語の中に迷い込んでしまったようだ。
「…昔っぽくていいね。」
「そうだね、中、行こうか。」
店内は古ぼけたエアコンが必死に店内を冷やしていて、時折涼しいのかぬるいのかわからないような風が頬を撫でていく。咲夜は駄菓子に夢中で、すでに小さな買い物カゴにお菓子が入っている。しかもよく見れば全て二つずつ。
「なんで二つ?」
「一緒に食べようよ」
「いや、それは良いんだけど、払うよ?」
流石に女の子に全て奢られるのはどうなのか。
「いつものお礼、ね?」
そんなの、俺のほうがしてもらっている気がする。勉強を教えて貰うだけじゃなくて、こんなに色付いた夏休みを送るのは初めてだから。
「…わかった、ありがとう。」
ただ、ここで断るのもなんだか無下にするような気がして、お菓子関係は咲夜に任せることにした。僕は、咲夜が会計をしている間にあるものを買った。
僕達はそれぞれ会計を済ませ、外にあった日陰のベンチへと向かった。咲夜の買っていたのは個包装の小さいお菓子たち。あまり大きくても食べるのに時間がかかるから、ということだろう。
「ねぇ、蒼空くんは何買ったの?」
「アイス、先食べようよ。」
流石に奢られっぱなしも嫌だし、今日は暑すぎる。日陰なんて気休めにしかならないからこそのチョイスだった。無難にソーダ味のアイスバー。
「アイス…!?」
「うん、ソーダ味だけど良かった?」
「うん!食べるね!ありがとう!!」
二人して暑さに負けたアイスを溢さぬように必死に食べて、辺りは蝉の鳴き声がこだましていた。
「…ふぅ、アイス終わったし、お菓子食べよ。」
「そんなに入るの?」
「うん、食べるの楽しいじゃん?」
そういいながら一口サイズのグミを放り込む咲夜。僕も食べ終わったので咲夜のバーも受け取って捨てようとしたところ、咲夜のバーに何かが書いてあった。よく見るとそれは【当たり】の三文字。
「咲夜、これ当たってるよ」
「え、嘘!初めて当たったかも!!」
グミを飲み込んで嬉しそうに咲夜は言う。
「引き換えてきても溶けるね…」
「じゃあこれは記念に取っとくね!」
そういってハンカチに包んでしまう咲夜。勿体ないなぁと思ったけど、あれは咲夜なりに一番大切にした結果なんだろうと思う。
「僕も食べていい?」
「どーぞどーぞ!」
その後は二人してくだらない話をして、笑ったり、時にはツッコんだりしながらお菓子を食べた。
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