水族館でためいき

釣ール

やぶれたベール

 つめたい世界が苦手で水族館に行くのが苦手だった。




 海の怖さが子どものころに貝殻かいがらで足裏に傷がついた時にしみついてしまったようだ。




 異形いぎょうと言われる人間に生まれてしまったばかりにもう二度と海へ受け入れられてもらおうという子供の時の願いはかなえられることはないのかもしれない。




 一時的に水の中で生きていける魚になれるのではないかと水族館に何度かおとずれてみた。




 もちろん海に受け入れられてもらったわけではない。

 閉じ込められている水に住む生き物をながめただけだった。




 幸せそのものをうたがっている時にやってくるんじゃなかった。



 泳ぐ魚たちにまざって海で過ごすことも人間がいるかぎりない。




 そして自分が人間である以上、共存きょうぞんはありえない。




 思い上がらないよう生きていく。

 苦手な水族館で現実を見てきた。




 いままで出来なかったことができたのは陸でしか生きていけない人間の中で大いなる前進ぜんしんかもしれない。




 いつか海へ飛び込むことがあるかもしれない。




 その時は海を汚さないように気をくばろう。

 決してまじわらない生き物としての自覚じかくを持つことで今日歩いたことは無駄にならないから。

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水族館でためいき 釣ール @pixixy1O

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