第十話 そして現在

ニ〇☓☓年 七月五日 光希宅


 ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ


 アラームの音が朝六時を告げる。

(……もう朝か)

 眠たげな目を何とか開けながらアラームを止めた。上半身を起こし、まだ覚めきっていない頭を動かすために体を伸ばす。すると、カーテンの隙間から朝日が差し込んだ。その眩しさに目を細めながら、ベッドを降りる。

 必要最低限の家具しかおいていない簡素なワンルームでテレビをつける。適当にニュースに変え、アナウンサーの声をBGM代わりにカーテンを開きに行く。

『今日の日没と同時に始まる光葉雪は、実に七年ぶりにもなるということで街では――』

(もう、あの日から六年も経つのか……)

 アナウンサーの言葉に数秒、昔のことを思い出した。そして本来よりもずいぶん小さく見える世界樹の方へ視線を落とした。

(何はどうであれ、オレは今日、この6年間の……っ果たすんだ)

 その歯切れの悪い間が、光希オレがこの六年間何と戦っていたのか物語っていた。

 これでやっと全部終わる……。そう無意識のうちに口からこぼれていた。


 何も映すことがなくなった瞳。それが見据える先には一本の大きな世界樹がある。拳を強く握りしめる。やがてオレは身支度を進めるために部屋の奥へと戻っていった。



 光のように進んでいた少年の姿はもうどこにもいない。そこにいるのは、ただ進むことを恐れ、立ち止まっている――



         ――独りの幼い青年だった。

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