第七話 あの日……

 ――六年前 東京都☓☓区――

 

 その日は数週間ぶりにもなる快晴だった。

 夕方になってもまばゆさを失わない太陽の下をオレは疾走していた。

(早く兄ちゃんに会いたいなー!)

 当時中学ニ年生だったオレは、ウキウキが抑えられない顔をしていた。なぜならニつ楽しみなことがあったからだ。一つは、その今日がオレの誕生日だということ。もう一つは、久しぶりに大学生の兄が帰ってくることだった。

 ニつの楽しみが重なったことでオレの気分を例えるなら、留まることを知らない光のようだった。



――だからこそ、この先に起こった悲劇はオレを大きく変えることになる――



 ……パトカーのサイレンの音が聞こえる。現実に引き戻される。

「家に帰ってからどれくらい経った?」

「ねぇ父さん、母さん?」

「………っ、ねぇ、兄ちゃん?」

 オレの悲鳴にも似た声に答えてくれる人はいなかった。その事実にオレは、目の前で起こっていることが夢でも幻術でも妄想でもないことを嫌でも実感した。

(嫌だっ! いやだっ!! うそだ!!)

 受け入れたくない現実を目の前に、オレは涙が溢れた。



 ………泣き続けるオレの辺りには、大量の血と、三つの冷え始めた体があった。

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