第四話 ツアーガイド(3)
「ほらあれ! 光葉雪だよ!」
一人がそれを発した瞬間、世界樹の葉が大きく揺らいだ。きっと偶然だろう、と頭の中で処理し、オレは話を進める。
「そう、光葉雪は毎回不定期に起こる現象ですが、実は本の収容率が九割を超えると起こるものなんです」
「「へぇ、知らなかった!」」
彼らの感嘆の声に、不器用な微笑みを作り頷く。そしてもうすぐこのツアーが終わるという希望が見えた。やっと解放されると思うと心が軽くなる。
「光葉雪は名前の通り、葉の形をした光が雪のように降る現象です。そして光葉雪で降る葉は全て、世界樹で生み出されています。さらに、その葉一枚一枚に世界樹で管理されていた本の情報が含まれているんです」
オレの説明に彼らはぽかんとした顔をしていた。一気に喋りすぎた、と内心反省しつつフォローに入る。
「例えば、スマホの容量が限界に近づいたら何かしらを削除して空きを作りますよね。世界樹も同じで、新しい本を管理するために古い本を消滅させるんです」
この説明のおかげか、彼らのちんぷんかんぷんという顔がワクワクと輝く顔に変化した。その顔に新たな色彩を魅せるかのように話を添える。
「これは余談ですが、光葉雪は一部の人たちの間ではこう呼ばれています。――死者と対話できる日、と」
オレの意味ありげな発言を前に、彼らの輝いている表情はより一層磨きがかった。
だがこのままいけば、また質問攻めにされるのが目に見える。それだけは勘弁してほしい、と思いながら彼らに優しく話す。
「この話題が気になる人も多いと思いますが、これはみんな自身で考えてみてください」
えぇーー、と残念がったり、不服そうにオレを見たりと彼らは表情をコロコロと変えた。そんな彼らをなだめるために話を続ける。
「その謎はきっと、ニヶ月後に起こるとされている光葉雪を不思議で面白いものにしてくれますよ。なので今回の光葉雪ではぜひ、今までとは違った視点で眺めてみてください」
この言葉を最後に、今回のガイドツアーは幕を閉じた。
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