第18話 スポットテイルフォールとアイスクリーム
帰宅してきゅうりのえび塩和えをつまむと、さっそくお気に入りの椅子に腰掛ける。
気分を落ち着けて目を閉じると、意識の切り替えの経路の感を引き寄せる。
「船」にシフトチェンジした。
違和感を読み取って見上げると、上がけぶっている。
ぽつぽつぽつと、身体に何か当たってくる。
ぴしゃーん、
と頭の中で光が煌めいた。
モノ
コト
モノ
頭の中で 満たさ れて いく。
なんだ、これはと 思う お前は
頭の中にようやっとアイスクリームを 描いた。
滴りはやがて激しい当たりとなり、全身を容赦なく暴き出していく。
どんどんどんアイスクリームが溶けていく、
そのたびに いける。
モノ コトコト モノモノモノ
波状に干渉 アタマが だらけ
アイスクリーム おもう とける
天に当たる。
透明な天井ができた。
ふう〜〜っっ!!
雨が天井をつたい、エリコには当たらずに流れ落ちる。
かたまっていた姿勢を楽にし、背もたれに身体を預ける。
アタマから脳汁がドバドバ出っぱなしまくりだ。
アイスクリームで正解なのかっ!?
それが0と1の分岐点に見えて仕方がない。
かたすぎてもやわらかすぎてもダメだった。
とけるという点もミソだったかもしれない。
それにしてもこの現象はなんだろう。
霧雨の集中豪雨のようだった。
雨滴が身体に触れた瞬間、物語が潜りこんできた気がする。
指輪からホワイトボードを出し、「世界」と「物語」の間に「物語の雨」と書いた。ちょっと考えて、AI翻訳してもらうと、「スポットテイルフォール」と変換された。
「Rain of Stories」でないことに違和感を覚えた。
指輪は神経と非接触でつながり、脳を侵食しない程度に連動している。
無意識を汲んで、よりよいものに変えてくれたのか。
普段デバイスは使わない。
自分に自信があるからだ。
それでも手の延長、アタマの延長として便利なこともあるので所持だけはしているのだ。
天井を拡げ、ドーム状にした。
KAGUYAが通りかかり、何も言わずに別の場所へと行ってしまった。
次に、当初の目的であった足場を拡げる。
いつもの床とは違う、力の僅かな昂りに煽られる。
足場はなかなか拡がらず、進みが遅い。
土台だから確かなものになっていくのが時間がかかるのだろうか。
どこか遠くで世界の音がする。
聞こえない音が聞こえている。
振動なのだが、降り落ちる物語と相まって五感を突いてくる。
静かなようで静かじゃない。
生成するクオリアが魂を揺さぶっているのだ。
椅子だけある世界に自分と椅子とが相転移した。
そこは存在感のある闇の中だった。
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