第14話 遠い声の上宇宙

 ほしぼしはしのうとしている……。


 アタシにできることはないのか?


「ウツロヒはもううごかないのか?」


 シーシャがたりない……。


 理解不能だ……どうしよう……。


「物語がそんしているのならば、まだやれることはある」


 物語!よく分からないけど、アタシの物語を分けてあげるよ!

 でもどうすればいいかさっぱりだ……。


 ホカイにつめこんで


 何もかも投げ出してもいいんだよ!

 ふぁっと頭が軽くなった。

 普段通り、難しく考えることではない……。

 アタシは何もないところに自分を投げ出し、放ってみた。

 織りなされた色とりどりの物語の子が絆されていく。

 光が揺れ動いていた。

 死よりも深いところに降りてゆく。

 私が水に浸かって横たわっている。

 アタシは抱き上げて額と額をくっつける。

 そして唇と鼻を重ねた。

 力強く息を吹き込む。

 アタシの中に渦巻いている物語がうつされる。

 そのまま寝かせて様子を見続ける。

 ゴホッ。

 霰もなく乱れ、もがく。

 指は引き攣り痙攣している。

 手をぎゅっと握ってあげた。

 荒れ狂いは徐々に収まり、輪郭が定まってきた。

 銀髪の長い髪をした、面長い顔立ちの女性だ。

 クルシサタナヤ。

 彼女は運び役だった。

 誰よりも疾く、確実にホカイを届ける。

 私アタシはもっている。

 届け先は銀河を3つ抜けて、果て。

 ――アタシに任せて。

 ……。

 しゅるしゅるしゅるとアタシが巻き取られ巻き戻る。

 ジャンジャジャーン!ウエストポーチを身につけていた。

 姿はアタシのままだ。

 でも、クルシサタナヤもここにある。

 ぐっきゅるるるる。

 ちょ、タンマタンマ。

 そのまんま、地球の自宅に帰ってきた。

 冷凍のジェノベーゼを解凍し、サラダチキンと一緒に食べる。ミョウガとベーコンのマヨネーズ和えもつくって添えた。物足りなかったので、おかかおにぎりも握りもしゃもしゃ頬張る。

 扇風機の中風を浴びながらアイスコーヒーを時間をかけて飲む。

 頃合いに複数の仕事が立ち上がる。

 気になったのでコードレス掃除機で天井の角の蜘蛛の巣を吸い取った。

 玄関の埃をきれいに掃きちりとりで取る。

 トイレに行きたくなったので用を足したらトイレットペーパーのストックが切れかけていたので、カテラリーから新しいのを持ってきて補充する。

 したいからする、自然な流れでこなしていくと、ひとつひとつの行為に力が封入された。

 細部に物語が宿った。

 ホカイが渡っているのがわかる。

 なんでもないことと、宇宙が交差していた。

 ひと通り終えて座布団クッションに胡座をかくと、あちらがやってきてこちらがやっていった。

 陽の光が揺らめいて煌めき、銀河を突き抜けていった。

 そして、たどり着いた。

 

  

 

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