第12話 世界物語より、長い休日を超えて
時間の矢がある。
今のところ狂いはないものとする。
ここは概念の場所であり、「世界物語」のグリッドだ。
『おにっこほいほいいっしゅうきいたん』が語られているのは動的時間からであるが、静的時間のエリコがその特性を生かし、物語の綻びに気がついた。
それをどう動的時間のエリコに繋ぐかだが、書き手、読み手を含めた超越特異点をリレーして先触れをぶちかましぶっ刺すんでありんす。
(参考文献:『哲学の世界』『世界哲学のすすめ』『物語論 基礎と応用』)
アタシの部屋に、KAGUYAがいる。
椅子にきちんと座り、一応は傾聴の姿勢だ。
うー、なんか緊張するな。
「いくつか分かったことがある」
「なんでしょう」
「ここ……この世界って世界自体が護られた世界であり、箱庭でもあるんじゃない?」
「どうしてそう思ったんですか」
「それはアタシがまだ気づいていない存在だから。他の存在たちは害意のある存在から遠ざけるよう、わざとこのような世界にアタシを置いた。アタシがどのようにしてか、上がるまで。実はアタシ、少しは知ったみたいなんだ。物語。世界であり、あるべき手段なんだ」
KAGUYAはふう、とため息をつく。
「それでどうしたいと?」
「部分が大部分を変えることもある!」
あれ?なんか違ったかな?
KAGUYAは神妙な面持ちでこと告げた。
「……遺伝子の突然変異。バタフライ効果。抗生物質の発見。確かに部分が大勢を一挙に変えてしまうことはあり得ます。しかし、それは恐ろしく確率の低い事象でもあるんですよ」
「それでも!こんなアタシでもできることがあると思うんだ。それに他の人間にも会いたいし。かーたんも協力してくれたら嬉しい」
「……」
「ほらっ!アタシまだ赤ちゃんみたいなものだし!あんよは上手って、見てくれる人が必要でしょ?それをKAGUYAさんに頼みたいんだ」
「そう、ですか……」
「地球は守るからさ。刑務もこれまで通りやっていくよ。……ダメ?」
指と指を絡ませながら、目を閉じて黙考しているようだった。
待つのは苦痛じゃないけど、この時間は引き延ばされてどこまでも終わりがなかった。
KAGUYAにしてみれば、地球何周分かの高速思考だったかもしれない。
それでも、待っているこっちの身にしてみれば別の時間流に身を置いているのだった。
窓に風が当たり、大気の音が伝わる。
「百花春至為誰開。函蓋乾坤。魚網之設、鴻則罹其中。螳之貪、雀乘其後。裡藏、變外生變。智巧何足恃哉。サヴォア人助任司祭の信仰告白……」
「えっ、何?」
「いいでしょう。エリコワタシ、を(罪人では問題があるので)この物語世界での地球特使と任命します。ただし、権限はうーんと限定させてもらいますが」
何々なになに!いきなりすごいことになったんだけど!アタシ、やっちゃっていい訳なの?ん?何か気になる言い方だったけど……まあいいか。
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