第10話 昨日とは違う風景への予習

 すぐさま駆け寄って抱き上げ、介抱する。

 下半身はなく、頭部も半分くらい吹っ飛ばされている。

 そりゃ、アタシがやったからね。

「あれ……ちゃんとなされていませんね……これではバレバレではないですか……エリコさん……ワタシはKAGUYAであってKAGUYAではありません……」

「どういうことだよ」

「物語帯……はもうご存知ですか?そのひとつの物語からのKAGUYAですよ」

「分からん」

「マルチバースは分かりますか」

「たくさんのさまざまな宇宙、どん」

「それが縦糸だとしたら物語は横糸です……互いは複雑に絡み合いながら世界を織りなしているのですよ……」

「物語っていうほど重要なもんなん?」

「あなたはまだ物語の何たるかを知らない……」

「誰が何をしたとか、おとぎ話とかそういうのでしょ?」

「それは物語の表層です。言葉で組み上げられた意味内容だけが物語ではない……」

「よく分かんないし、そんな徒手空拳で敵?に向かえないよ」

「部分が全体を決める・しめることもあります」

「ますますだよ」

「そのうちわかりますよ……今は物語帯をひとつは解きました。あと99本あります。あなたはこれから100本の物語を解き、その謎を解かねばならない。それがエリコさんの命運です」

「はあ?なんで?そんなことしなくちゃならないの?」

「これもまた運命ですよ」

「そんなの知らないよ!アタシは帰る!」

 アタシが立ち上がると、KAGUYAも立ち上がった。

「ワタシがあなたなら、2度とここには来ないでしょうね」

 アタシは空気のにおいを嗅ぐと【「そのうちわかりますよ……今は物語帯をひとつは解きました。あと99本あります。あなたはこれから100本の物語を解き、その謎を解かねばならない。それがエリコさんの命運です」

「はあ?なんで?そんなことしなくちゃならないの?」

「これもまた運命ですよ」

「そんなの知らないよ!アタシは帰る!」

 アタシが立ち上がると、KAGUYAも立ち上がった。

「ワタシがあなたなら、2度とここには来ないでしょうね」】にジャーマン・スープレックスをかける。

 叩きつけられ、粉々のぷーだ。

 もう無いも同然だ。

 考えるより先に身体が動いていた。

「何?今の」

「形而上の物理攻撃です……お見事ですが、滅多にできるものではありません。覚えておいてください、メタな攻撃ほど読み手は置いてきぼりにされるということを」

「アタシは不思議の国のアリス?兎穴なんて見つからないよ」

 ゆらめく光の中で、時空を超えた存在が呼応する。無限の可能性が渦巻き、次元を越えた知性が交差する。言語を超えた共鳴が、宇宙の奥底に響き渡る。


 

 

 

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