第9話 経度特異点

 収穫物が余ってきた。

「行ってきますか」

 山のようにコンテナに片っ端からパズルのようにモノを詰め、どんどん積み重ねてゆく。

 6TEUを装備してまずはずいぶん形の変わったオーストラリアにぽんぽーんと縮地する。

 森林地の陰で一休みする。

 今日は風が涼しい。

 ツノに虫が止まってしばらく無心でいる。

 あれからあの感覚は来ないがツノがなんだかむず痒い。

 ツノが感覚器にでもなったみたいだ。

 ビビビと破壊光線でも出せれば良かったんだけれどな。

 うーん、発想が短絡的になってしまうな。

 ひと段落ついたところでそのまま南下。

 経度特異点、南極へと足を踏み入れる。

 びゅうびゅう吹雪いていた。

 アムンゼン・スコット基地に到着。

 ここにはバカでかい地下倉庫があるのだ。

 天然の冷蔵・冷凍庫。

 往復し、コンテナを運び入れる。

 基地の休憩室でゆるゆると珈琲を淹れ、啜る。

 ――ここもずいぶんこじんまりとしてきた。

 どうにもならんのかねえ。

 ん。くんくん。

 においの元を辿る。

 ガスが漏れていた。

 機材室へ行って道具と修理材をピックアップし、のんびりと修理する。

「ここも漏れてますよ」

「ほいほい」

 トンテンカン。

「ところで」

「今日は荒れてますねえ」

「悪魔さんですか?」

 禍々しいツノの生えた同族ともいえるその女性体は「あら」という表情をする。

「わかりやすくていいでしょう。クトゥルフの方が良かったかしら?それとも妖の方が好みだった?フフフ、特異点では法則はねじ曲がるものよ」

「なんでもいいんだけど、アンタ、害なすもの?」

 返事のかわりに頭を床にグシャっと打ち潰された。

 アタシはとっさに脚でホールドして腹筋の柔軟さで懐の小刀を心の臓に突き刺す。

 悪魔女は血を吐き、ニタリとした不気味な笑顔を貼り付けながら力ずくでホールドを解こうとする。

 解けずに諦めて脚を潰しにかかる。

 エリコは身体を捻って悪魔女を叩き倒し、バウンドしたので反応が遅れた相手より先に脚を離して身体を思いっきり跳ねさせ、首をがっちり固める。

 頭がおおよそナノマシンによって修復と生成をしたところで悪魔女とキスをしてぷっ!とプレゼントを注ぎ入れる。

 そのままムーンサルト宙返りで後方に飛び、ほぼ同時に発生した爆発から離れた。

 コキコキ首を鳴らして首の座りを確認しながら爆心地をしばらく確認する。

 おかしいな……物語化攻撃だとしたら稚拙すぎる……。

 煙が晴れる。

 残骸が残っていた。

 KAGUYAだった。

 

 

 

  

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