第7話 テオリアの椅子

 雨が降っていた。

 家でできることをするしかない。

 家の中を掃除したり、洗濯機を回したりした。

 おしゃれには無頓着ではない。

 あるもので着こなしているが、それでも日々の彩りは欠かさない。

 カーたんは今日は生体ボディで活動している。

 しめやかさの情感を感じていたいんだという。

 あれから情報を整理してみた。

 さっぱり分からん。

 なんか湧き出してくる未知なるパワー!みたいなものもまったく感じられない。

 なんだったんだ?

 お気に入りの椅子に逆座りして背もたれに腕を組んでうーんと頭を捻っている。

 この座っている椅子も今違う物語帯では座っていないということ?

 それってパラレルワールドじゃない?

 でもあのちっちゃい女の子の話ではそうではない気がした。

 マルチバース?

 どうもしっくりこない。

「物語」というワードが引っかかっているのだ。

 世界と宇宙とどう違う?

 物語か。

 物語、うん。

 宇宙は無だけど物語は在るね。

 そう。私はパラレルワールドをパラレルワールドだと認識していたけど、あの子は違うのね。

 じゃあ……あの子がいるところは?

「物語」があるところ? いやでも、あの子は私と同じところだったし……。

 うーん、分からん! もう考えるのやめ!

「カーたん」

「ん?」

「ちょっと出かけない?」

「……いいですよ。でも行ける場所は限られてきます。東京ジョイポリスは……」

 椅子がブルブルっと震えた。

 レイヤーごとに多種多様な椅子が投影される。

 ん?壁の方に窓が見える。

 いや、その壁に窓は無いんだ。

 窓は近づいてきて広がり、身体を突き抜けていった。

 外の風景が展開されている。

 目の届く範囲に数値やマップ、ゲージなどが表示された透過しているモニターが複数ポップアップしている。

「カーたん、なにこれ??」

 KAGUYAも同じものを見ているようで、冷静に状況を分析しているようだ。

「どうやらコックピットのようですね」

「エリコさん」

 ギクギクッゥ!

「何かと出会いましたか、何か起こりましたか」

「ちょーいとマインドサーフィンをね、ほんのちょびっと……アハハハハハ」

「……まさか自らたどり着いた……?いや、可能性は……」

――システム、オールグリーン――。

――「“概装”地球:分地」、いつでも出発できます――。

 ちょ、タンマタンマ、ストッ、ストップ!!

 一瞬にしてもとの椅子に戻る。

「幻覚でした〜……」

「……」

「頭を切り開けてみますか」

 それって、冗談だよね?

 ね、カーたん!

 

 

 

 

 

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