007・008 精進と怠惰と誘惑

7

見た目ばかりにかまけ、自らの感覚を知悉せず、飲食に節度無い。心高めず、邁進の思いもない。こうしたものは自身に訪れる悪の誘惑に転がされる、根無し草が風に吹き倒されるように。


8

見た目にとらわれず、自らの感覚を知悉し、飲食に節度を保つ。心高め、邁進の思いを秘める。こうしたものは自身に訪れる悪の誘惑を克服する、風に吹きつけられる岩山のように。




Subhānupassiṁ viharantaṁ, indriyesu asaṁvutaṁ;

bhojanamhi cā mattaññuṁ, kusītaṁ hīnavīriyaṁ,

taṁ ve pasahati Māro, vāto rukkhaṁ va dubbalaṁ.


Asubhānupassiṁ viharantaṁ, indriyesu susaṁvutaṁ;

bhojanamhi ca mattaññuṁ, saddhaṁ āraddhavīriyaṁ,

Taṁ ve nappasahati Māro, vāto selaṁ va pabbataṁ.


パーリ読経

https://www.youtube.com/watch?v=MLo5rvf3Vok



He who lives looking for pleasures only, his senses uncontrolled, immoderate in his food, idle, and weak, Mara (the tempter) will certainly overthrow him, as the wind throws down a weak tree.


He who lives without looking for pleasures, his senses well controlled, moderate in his food, faithful and strong, him Mara will certainly not overthrow, any more than the wind throws down a rocky mountain.



唯求住淨樂,不攝護諸根,

飲食不知量,懈惰不精進,

彼實為魔伏,如風吹弱樹。


願求非樂住,善攝護諸根,

飲食知節量,具信又精進,

魔不能勝彼,如風吹石山。




 観心の上での精進を怠らず、続けること。言葉にすると簡単なのだが、こうしたものは言葉の上で転がしていればいいだけではなく、実践が求められる。実践ができたら、継続が。どうせ口ではいくらでも言えるのだ。ならばどこまで続けることができるか。自分などはこうした言葉をとりあえず弄するところまでしかできていない。


 自らの内側を眺める、感覚を知悉する。これはまさしく五蘊への理解と同質のものだろう。自身の身体という感覚器官の集合体を通じ、自分がどのような情報を得るか。どのような思考を働かせるか。今この瞬間、わずかに動かした指先のひとつに対し、どのような思考が働いたのか。そうして磨き上げられ切った感覚であれば、自分が自分であることそのものがひとつの神秘として感じられるのだろう。なかなかそこには至らない。そんな状態になってしまったらもういちいちものを書くのも馬鹿馬鹿しくなるのだろう。……そうなると、さすがにそこまでは行きたくないかなあ。いや、行って心底その境地を楽しめるのならばそれで良いのだが。


 書き出された言葉は所詮我が思想のうんこでしかない、は荘子である。外編のどこにあったか。天道編か。「然則君之所讀者、古人之糟魄已夫!」……あなたの読んでいるものは所詮古人のだしがらしに過ぎない、だったか。「書き出された言葉が自分のうんこ」はさすがに行きすぎた。けれど、まあ近いところはあるのだろうとは思う。


 書くことで自分の思考を整理する。飽くまで整理するべきは自分の思考である。とは言えその後幾度となくそのうんこを見ながら自分の思考の再整理をしたりもするわけで、では単純にうんこと言えるのかと聞かれれば、うーん。まぁ自分が死んでしまったら完全にうんこだ。どうせひり出すなら見事なうんこにしたいものだが、さて。


 自らの中の、「言葉」という感覚をたゆまず磨き上げたいものである。

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