第七話 不死身という事実

何が、起こった?


見ていなかった、いやそちらに視線を向けていたとしても


恐らく、何が起こったのか理解で着なかっただろう


過程はすっ飛ばし、ただ事実、結果のみがそこに残った


シトリーの首と胴体が離れた、という結果が


恐怖、危機感、隠し味に殺意


ああ、こいつを殺さなければならないとゼパルは反射的に思った


逃げる、なんて考えは浮かばなかった、逃げれると思えなかったから


「逆撫―――」


俺がそう詠唱し、聖術を発動しようとした、その瞬間


「お前さん、まだ生きておったのか」


オスカーがそう言った、そして、俺の首と胴体、さらに四肢が離れた


それだけだった、俺が理解できたのは


「笑止」


血塗られた部屋の中で、一人オスカーは佇み、呟く


「つまらん」


最初の男、シトリーと言ったか、彼奴あやつはまだマシだったが―――


この老いぼれに負けるようじゃあのう


次の男は、名前は―――


知らん、覚える価値すらない、カス、金魚の糞以下じゃったのぉ


「まぁよいよい、少しは楽しめた、からのぉ」


オスカーはそう言いながら、ドアノブに手をかける


(ん?何か?)


少し、違和感を感じる、だが、気のせいだと一蹴し


ドアノブを握り、扉を開く


すると、違和感の正体が判明する


「やはり、馬鹿娘、じゃったのう」


ただ、先ほどの姿を思い出せなくなるほど


凄惨な姿の、馬鹿娘がそこにいた


手足を縄で縛られ、口は布で封じられたヘレンが、いた


そして、口を封じる白い布には


『Noland's Tragedy(ノーランドの悲劇を)』


と、血文字で書かれていた


「これも、ノーランドの宿命か」


「派手に殺ろうぞ」


オスカーは振り返り、そこに当たり前のように佇むシトリーを見て、そう言った―――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る