第四話 とある村の可能性

「はぁはぁはぁ、シトリー一つ良いか?」


「何?」


「俺は何時まで、お前を背負いながら歩けばいいんだ?」


今、俺たちはこの森の中を歩いている


俺たちはと言うが、歩いているのは俺だけだ、シトリーは俺の背中に乗っている


「ああ、そうだね、とある村が見つかるまで、かな」


「クソが、自分で歩けよ、それくらい」


そんな愚痴を吐くが、シトリーがそれを気にしている様子はない


少しは気にしてくれよ、とは思うが―――


「あ、ゼパル、よかったね、もう歩かなくていいよ」


その言葉を聞き、顔をあげると目の前に村、のようなものが見えた


「さて、ここからは僕の仕事だ」


その後、シトリーは村に入り、多分、その村の村長みたいなやつに声を掛けていた


そして、トントン拍子で事が進み、その村に住まわせてもらう事が出来た


ちなみに、その交渉では俺は隣に立ってただけで特に何もしていないし


何をしたのかはわかっていない


少し、時が戻り、シトリー視点


「あなたがこの村の頭ですか?」


僕は村に入り、まず、この村の頭を探した、すると、この家に案内され


目の前にいる老人と対面した


「ああ、そうじゃが、こんな村に何か用かのう?」


「まず、そうですね、お願いが二つほどあるんですが」


「ほう、お願い」


「まず、僕に頭の地位をください」


僕がそう言った、その瞬間、村の頭の隣に控えていた側近のような女が反応する


「何を言っているんだ、そんな事……ッ!!」


「静まれ、まず話を聞くところからじゃ」


側近の女を、頭がそう宥める


「まず、自己紹介から、儂の名はジェームズ・オスカー」


「そして、隣にいるのがヘレン・オスカー」


ああ、側近ではなく、娘か、まぁ近い地位ではあるのだろうが


「で、あなたは?」


「僕の名前は、シトリー・ノーランド、生まれは北です」


僕がそう言うと、老人、オスカーの眉がピクリと動いたのが見えた


「ノーランド―――ッ?!」


「ああ、ご存じでしたか、それなら話が早い」


「では、次のお願いです」


「僕たちを取り囲むの辞めていただけないでしょうか」


「流石はノーランドの名を名乗るほどのお方、お気づきでしたか」


「ヘレン、クリスに伝えろ、持ち場に戻れ、とな」


「はぁ?おじいちゃん、何を言ってるの?こんな奴の言いなりになるわけ?!」


「ああ、なるわい、儂はまだ命が惜しいからのう」


「ふん、分かったわよ、族長の命令だから従うけど」


「衰えたものね、こんな小僧に従うなんて」


ヘレンはそう捨て台詞を吐いて、この部屋を出て行った


「はぁ、申し訳ない、娘はまだ外に出た事が無く、世間知らずが過ぎるのです」


「いいよ、別に、で、もう一つのお願いは聞いてくれるのかな?」


「それは……正直、今すぐにでも頭の地位を明け渡したいのですが……」


「さっきの娘のように、従わない者もいる、と」


「はい、申し訳ない、儂の年代ならまだしも、娘の年代だと、ノーランドの名を知らぬ者も多いので」


「それは仕方ない、当主が父の代に変わってからの方針だからね」


「わかった、じゃあとりあえず住ませてもらうだけでいいよ」


「わかりました、今すぐ最上級の家を建てさせます、建つまではこの家の客室をお使いください」


そう言って、オスカーは目の前にあるテーブルに鍵を置く


「じゃあ、ありがたく使わせてもらうよ、行こう、ゼパル」


シトリーにそう言われ、俺はドアノブに手をかける、だが止まる


「待って、ゼパル」


シトリーの声によって


「オスカーさん、やっちゃいましたね」


シトリーが少し笑いながら、そう言った


「あんの馬鹿娘が」


シトリーの発言に対して、オスカーが何かを察してそう言った―――

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