第8話 Aパート
転送システムにより
「ブラボー、ブラボー! いい戦いっぷりですねぇ!」
クオートの代表取締役、
「みなさんも、ね」
夜長に命じられて、六人はパチパチと拍手をし始めた。手袋のせいか、くぐもった音がする。ただ一人、勝風は腕を組んで応じなかった。さきほどのフォワードの戦いは、クオートのドローンが中継している。
「せやから、仮面バトラーはフォワードだけでじゅーぶんなんよ」
フォワードベルトの開発者にして、フォワードの使用アイテムの立案から設計、製造までを受け持つ『
「お嬢様を
「そうなんですか?」
『うむ。お嬢様の【復元】は、怪人によって破壊された町を修復するためだけにあらず。
「ディフェンダーモードより、強い怪人を送り込まれるかもしれない……ってことか」
「そんなイタチごっこをやっていたらキリないで。そうは思わん? ヨナガ」
ヨナガは白い歯を見せて「稀代の大天才、鷲崎タクト氏には早急にアポストロフィーを一網打尽にできる正義の兵器を開発していただければと思います」と返してきた。視線はフォワードベルトに向けられている。
「正義の兵器、ですか?」
「そうです。仮面バトラーシステムの正式な装着者は、人智を超えたパワーの持ち主となりますですね。したがって、力の使い方を見誤れば、人間の凶悪な敵ともなり得る」
「そんな、ボクは!」
勝利が一歩前に出るのを、タクトが制する。夜長の主張は、タクトにも理解できていた。
「ウチはフォワードベルトにイニシャライズを搭載した。もしフォワードベルトがショーリ以外の手に渡ったとき、フォワードの力を悪用されんようにや」
「裏を返せば、変身する前に勝利くんの命を奪ってしまえば、仮面バトラーフォワードは活動できなくなりますよねえ。フォワードが悪の道を進むのであれば、問答無用で切り捨てる運用ということでしょうか」
「そうはさせない!」
リベロヴァルカンを背負う七人の中に、声を上げる者がいた。勝風である。
「オレは、平和を守るため、そして、抑止力として、この力を手に入れた。平和を乱すのであれば、弟だろうと相手になってやる」
「兄貴……」
「それとも今、引導を渡してやろうか」
勝風をはじめとした七人が一斉にリベロヴァルカンを構え、銃弾を装填する。リベロヴァルカンは、銃弾に込められた仮面バトラーリベロのデータを読み取る機能が備わっていた。
「まあまあ。みなさん落ち着いて落ち着いて。短気は損ですよ」
夜長が割って入った。クオート一同は、代表取締役の言葉で動きを止める。
「もしかして、みんな“仮面バトラーリベロ”に変身できるの!?」
「ええ。そうですそうです。我が社のリベロは、リベロヴァルカンとバレットさえあれば、老若男女誰でも変身ができるのです。現在は七丁しかありませんが、ゆくゆくは量産体制を整えます」
「クオートは『武器商人』になるつもりなんか?」
コンマは、地下駐車場の一部に
「タクト氏とは設計思想が違うのですよ。おわかりいただけないでしょうか。怪人という脅威から、平和を守るための『防衛システム』の仮面バトラーは、もっと周知されるべきです。我が社といたしましては“一家に一丁”が目標でございまして」
『ふざけるな!』
ゴートが声を荒げた。見た目こそ執事の姿をしたヤギのぬいぐるみではあるが、シンボリックエナジーの応用で生み出された仮面バトラーフォワードの
『黙って聞いていれば……ヨナガとやら、おぬしは仮面バトラーシステムの理念を理解しとらん! ショーリ!』
「はい!」
『
「えっ!?」
『七丁しかないと言ったな。つまり、此奴らの持っているものがすべてじゃ』
「ちょっと待ってよゴートさん!」
『なんじゃ。ショーリはヨナガの肩を持つのか?』
「い、いや、そういうわけじゃないよ。ただ、ここで破壊しなくてもいいかなって思ったんだ。フォワード以外に戦える人がいるのは心強いから。リベロはこれまでも、フォワードの戦いを助けてくれていたわけだしね」
『じゃが、仮面バトラーシステムはお嬢様をお守りするものなのであって……』
世界の平和を守るための力ではない。お嬢様を狙うアポストロフィーが怪人を生み出して、世界の平和を乱しているから戦っている。この違いを、ゴートは『理念を理解しとらん』とした。
「ボクは、リベロについて詳しく知りたいな。教えていただけませんか、鳶田社長」
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