第11話仲間⑶
うちとアデルさんは、スラムまでやって来た。柄の悪そうな大人がうじゃうじゃといる中、アデルさんの手を握る。ピクンと揺れたが、優しく手を握り返してくれた。
「離れんなよ。カインですらスリに遭うような場所だ」
「なら、適当な武器でも買ってきてくれたら良かったのに」
「手に馴染まねぇ武器は怪我を招くぜ?自分も、周りも」
「それは…ヤです」
「うちのせいで、人が不幸になるのは…ヤ」
と、うちは呟いた。そうだ。もう誰も巻き込みたくない。母はうちを逃がして生死不明だし、クラディールさんも捕まってしまった。これ以上は……もう……。
「なら、守るしかねぇじゃねぇか」
「できるでしょうか」
「できるともさァ。男だろうが、女だろうが、守りたいもんがあるから強くなるんだ」
そうか、うちも、強くならないと。クロネを守りたい。あの子を守れるくらい、強くありたい。それが、クラディールさんのためだもの。あの人と約束した。守るって。一緒に脱走するってことは、そういうことだってうちは思っている。
「っと、着いたぜ」
足を止めたのは、古めかしい商店のような店。でも、戸棚には現代兵器がずらりと並んでいる。どれもこれも凄い値段だ。一千万とか。
「うっす、じっさん」
白髪に口ひげを蓄えた小さなお爺さんが、カウンターに座っている。確かに、少し胡散臭いかも。
「……アデルか。その嬢さんは?」
「連れだ。こいつに合う武器が欲しくてねェ」
「子供でも使える武器ねぇ……」
ガタガタと木箱を漁るお爺さん。危険な武器をあんな扱い方して大丈夫か?すると、何やら拳銃のようなものが置かれた。警察の持つものより、なんかかっこいい。
「少し昔のフォルムだが、扱いやすさならこれだな。反動も小さい」
「リボルバーか…まぁそれが妥当か。で、値段は」
「百万デニカ」
ひゃ、百万ンンンン!?そんなに高いのか、銃って!宿屋でも五百デニカあれば部屋は借りれるぞ!確かに、戸棚に並んでるので覚悟はしてたけど!少し昔のフォルムって言ってたから、もう少し安いのかと思ってた!
「何言ってんだ、じっさん。百デニカの間違いじゃねぇの?」
「何言ってんだはこっちのセリフだ、なら五十万でどうだ」
「まだ高い。こちとら騎士だぜ?貴族じゃねぇの。それにこれ傷物だぜ。千デニカ」
「こっちも商売でやってんだよ、これは装飾だ。二十万」
な、何が始まったんだ?どんどん値段が下がってく!ど、どういうロジックなんだ、これ!
「買った。一万デニカ。それと注文してた剣も取りに来た」
「はぁ、商売上がったりだよこちとら」
「ぼったくってる方が悪いんだよ。そんなに客欲しいなら今の百分の一くらいまで値段下げとけ」
そう言いながら、カウンターに置かれた拳銃を取り、うちに渡してくれる。
「扱いには気をつけろよ。これで人でも撃てば殺せる。ここぞって時、心を落ち着かせて使うんだ」
「はい」
「ついでに弾もつけとくぜ」
「おう、すまねぇな」
カランカランと、カウンターに弾が置かれる。ざっと三十発。
「こんなに…ありがとうございます!」
「なに、ちーとしたサービスだよ」
「珍しいな、あんたがサービスなんて」
「気まぐれだよ。これからもどうぞご贔屓にな」
うちは、もう一度深々と頭を下げ、武器屋を出た。まぁたしかに、クロネがここに来たら、「出直してきまーす…」とか言って帰りそうだよな。
「気ぃ引き締めろ、こっからが本番だ。いつでも撃つ覚悟してろよ」
「はい……」
工場街の入口に、歩みを進める。入口近くに、二人の姿が見えた。緊張する、足が震える。でも、やらないと…!
覚悟を決めて、工場街を睨みつけた。
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