異能者たちの宴 4
森の修復から帰ってきた夜空は唐突に口を開く。
「あー、立ち話はなんだし、俺ん家で飯食いながら話でいいよな?」
「また唐突に貴方は……」
「あー、答えはいらない。今、アンタたちにはイエスしかない。何故なら俺は腹が減ったから。行くぞ」
夜空は、ユリウスの言葉を遮って速攻でキビを返して山を降りていく。
その後ろ姿を見たリリスは何を言えばわからず。
「なんなのあの人は……」
「身勝手な人間のクズです」
思わず溢したリリスの言葉にタイムの口からは反射的に暴言が飛ばした。
「こうなれば何を言っても聞かないタイプなのは確かですね。仕方ありません、勝者の言葉です。行きましょう、お嬢様」
「……わかった」
複雑な心持ちのままリリスたちは夜空を追いかけた。
◇ ◇ ◇
街外れの駄菓子屋。
「よぉ、ババア。ただいま」
夜空がガラガラと扉を開くと、そこには仁王立ちした見た目は40代程の和装の女が立っていた。
「夜空!!! 店番ほったらかしてどこ行ってやがった!?」
そして、夜空を見た途端に物凄い勢いで怒鳴りつけた。
「うるせぇ! ちょっとした用事だ!! んな事より客連れてきたから居間を使わせて貰う、決定。よし入っていいぞー」
「何を勝手な事を言ってん、!??」
夜空の勝手な言い分にキレた和服の女の言葉は入ってきた三人によって詰まってしまった。
「ハ、Hello?? ワタシハトウコイイマス」
突然の外国人に動揺してカタコトになる橙子。
「日本語で構いません。そして突然の訪問、申し訳」
「あー、挨拶は後でいいから早く入れよ」
橙子とユリウスの会話をぶった斬った夜空は軋む廊下を歩いて奥へと消えてしまった。
「あんのクソガキ!! あー、てことなんで皆さん上がってください」
傍若無人な姿を見た橙子は額に青筋浮かべるも仕方なくリリスたち三人を上げた。
◇ ◇ ◇
趣のある和室で長い机を囲み座る夜空たち。
「いただきまーす」
「てんめ! 食う前にどういうことか説明しろってんだ!!」
「あー、それじゃ。右からユリウスさん、リリスお嬢様、タイムさん。なんか海外のスゲー家の人たちで、俺に用があって昼間尋ねてきた。んでなんやかんやあって、今。この鮭うめぇ」
「は? 何言ってんだオメー」
理解不能。
足りなすぎる夜空の言葉を前に唖然とする橙子。
それを見かねたユリウスが声をあげる。
「橙子様、事の説明は私がさせていただきます」
「そうしてくれると助かるよ……。あと様はいらねぇ」
「はい。それでは経緯を」
そして説明する事、十分。
「なるほどそういこと……、じゃねぇわ!! 何やってんだクソガキ!!! また面倒ごと持ってきやがったな!?」
決闘の事は伏せられて、噂を聞きとあるパーティーにボディーガードとして参加して欲しい、とかなりマイルドな説明をしたユリウス。
しかし、それでも橙子はキレた。
「るせぇ! すぐに片付くから気にすんな!! 俺にかかれば一瞬だ、一瞬」
「そりゃ後先考えなきゃなぁ!! 人様に迷惑かける事すんなってんだ馬鹿野郎!! やるなら穏便に済ませろ! じゃなきゃアンタの部屋のゲーム機をすべて壊すよ!!」
「──!? 人の心がねぇのかババア!!」
言い放たれた橙子の残酷な言葉。
ゲーム、それは夜空にとって退屈を和らげる物の一つだった。
それを壊す、その言葉に流石の夜空も動揺し声を荒げる。
「言っとくが夜空。今オメェに残された選択肢はイエスだけだよ」
「クソが……」
橙子から本気の圧をひしひとと感じた夜空は本当に渋々折れることにした。
そして、その姿を見た三人は
「「!?」」
「夜空殿が折れた……!?」
驚愕していた。
出会ってからたった数時間、されど言動や行動から見て、人の言うことを聞くような人間ではない。
それがユリウスたち三人の共通認識。
そして、それは正しかった。
ただこの家、橙子前では違う。
この家の主は橙子、つまりルールそのものだった。
故に夜空すらも縛られる。
しかし、タダでない。
「ハッ、わかったよ。穏便にね……」
「夜空殿……?」
そう意味ありげに橙子に言われた言葉を復唱する夜空の姿を見たユリウスは悪い予感がした。
それと同時だった、夜空が立ち上がり言った。
「ご馳走様。ババア、俺はちょっと食後の運動してくる。三人の相手頼んだ」
そう言って、また夜空は居間を出て行ってしまった。
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