決着 2
夕日が完全に沈んだ頃、森で横になっていたタイムが目を覚ます。
「ハッ!! 奴は!?」
勢いよく飛び起きたタイムはブンブンと首を振って何度も辺りを見渡し、そこで泣きそうな顔を浮かべる少女と目が合った。
「お嬢様……」
「タイム……。タイムぅぅ!!!」
「ウッ!?」
そして、途端に叫び突進してくるリリスをなんとか受け止めたタイム。
「お、落ち着いてください! お嬢様!!」
「嫌! バカタイム!! すぐに喧嘩や怪我ばかり!!」
「うっ、しかし……それは奴が!!」
店でのやり取り、憎たらしい顔の茶髪男の事を思い出したタイムは語気を強くし返答しようとするも、
「言い訳なし!!!!」
「すみません……」
リリスに一蹴され謝ることしか出来なかった。
「ハハッ、起き抜けに言い合いとは身体は問題なさそうですね、タイム」
その一連の流れを側で見守っていたユリウスは和かな笑みを浮かべ言う。
「ハッ! ユリウス、奴はどこに行きましたか!? 勝敗は!?」
「あぁ、夜空殿ならあちらに。あれを見れば勝敗についても自ずとわかるでしょう?」
「どいうことですか……、!?」
ユリウスに誘導され、その先でタイムはまるで落雷が落ちたような衝撃を受ける。
タイムが見た物、それは破壊されて森を全て包み込む蒼き光。それもただの光では無く、膨大な量の《ルミナス》の輝き。
(ありえない……。私が何人いればあれ程の量のルミナスを出せる? なぜあれだけの量を身体に収めたまま人の形を保っていられる?)
タイムの額に冷や汗が浮かぶ。
(いやそれよりもあの量のルミナスを完璧にコントロールするなんて一体どれ程……)
そしてタイムは自覚する。
「クッ!!」
格が違う。
頭に浮かんできたその言葉を押し殺すようにタイムは顔を手で覆った。
「タイム……?」
そんなタイムに不安そうな表情で声をかけるリリス。
しかし、反応はなく。
「嫌だ、認めない。次は必ず……!!」
激情に流されるままタイムはそんな言葉を吐き出すだけだった。
「その
ユリウスにとってタイムとは愛弟子であり未だ咲かない才能の蕾だった。その才能が天海夜空という
(糧に大輪の花となるか、潰され枯れ果てるか)
「これから先が楽しみですね」
ユリウスは、その黒い内心とは裏腹な笑みを浮かべた。
◇ ◇ ◇
決闘同日の夜 謎の洋館の一室
白髪、そして右目に眼帯をつけた男が、目の前に立つ白いスーツの男に聞く。
「天海夜空への招待状はどうなった?」
「すでに向かわせました。すぐに報告が来るかと思われます」
「パーティーの準備は?」
「そちらも抜かりなく整っております」
「そうか。ならいい、下がれ」
「ハッ! 失礼します」
一礼し、部屋を後にする白スーツの男。
それを見届けた眼帯の男は笑う。
「フハハハッ! やっと……! やっとだ! ようやく我らの宿願が果たされる!!!」
その後も、男は狂ったように笑い続けていた。
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