異能者たちの宴 3

 喫茶店 めーぷる


 ユリウスの車から降りた夜空は視線を感じ上を見上げた。

 するとそこには、夜空を窓から覗く桃色の髪の美少女がいた。


「お、もしかしてあのピンクの子がリリスお嬢か?」

「ええ、そうです。そしてその隣が護衛のタイムです」


 ユリウスの説明に夜空はへぇーとだけ返事をした。

 そして二人は移動し、チリンとなる扉を開けて店内へと入った。


 すると、桃色の髪の少女が二人に向かって走ってきた。


「ユリウスー!! お帰り!!」


 店内に響く大きな声。

 走る桃色の少女は勢いよくユリウスへと突撃した。

 

 そして、それをなんなく受け止めるユリウスは言った。


「店内では大声を出して走ってはいけません。リリスお嬢様」

「あ、ごめんなさい……」


 ユリウスに叱られたリリスはカウンターで仕事する店員へ謝罪した。

 それを見た店員は顔を綻ばせながら全然いいよ! とサムズアップをした。


「微笑ましいやりとりをありがとよ。ま、早く座ろうぜ。さっきから何故かタイムさんに睨まれてるし、俺」


 リリスとユリウスの微笑ましいやりとりの最中、タイムから明らかに警戒の色が込められた目を向けられていた夜空は言った。


 その言葉を聞きユリウスはタイムへ目を向ける。

 そして諭すように言った。


「タイム、落ち着きなさい。説明は座ってから。リリス様も先にお戻りください」

「……わかりました」

「わかった!」


 ユリウスの言葉に飲み込むような返事をするタイムと元気よく返事をしたリリスは、一緒に席にに戻っていった。


 そして、夜空とユリウスも後に続き席に着いた。



 

 ◇◇◇◇◇


 全員が席に着いた事を確認したユリウスは言う。


「さて、先ずは彼、夜空殿紹介から……」

「何言ってんだ、ユリウスさん! 飯屋に来たんだから先ずは注文しなきゃ失礼だろ! すみませーん、これとこれと、後はこの特製クマパフェ四つくださーい」


 悩むように口を開いたユリウスを尻目に店員に注文をはじめる夜空。


 それを見た三人は目を丸くした。


「ん? どうした? そんな顔で見て。アンタらも分もちゃんと頼んだぞ?」


 3人の反応に対して真顔で的外れな事を抜かす夜空。


「夜空殿、今はそういう空気では……」

「空気? 知らんね、そんなもん。話し合いなんて飯食いながらできるだろ? それに美味いもの食べると会話の質めっちゃ上がるから」


 そう適当な事を言いながらウザいドヤ顔をする夜空。

 それに対してユリウスは何かを諦めたようにため息をついた。  


 そして、ユリウスは隣に座る滅茶苦茶な男を無視する事に決めた。


「では、改めて。私から、彼の紹介をさせていただきましょう。彼の名は天海夜空殿。ご覧の通り、私の手に負えない自由人です。しかし、その力は本物。タイム、貴女にものでしょう?」

「はい。しかし、見えたのはだけです。失礼ですが、扱う本人の行動に問題がある。お嬢様の護衛を任せるのは危険かと」


 そんなユリウスとタイムの会話を聞いていた夜空はうわぁ、と嫌な顔をした。

 

「うへぇ、いきなり辛辣すぎだろ。んー、でもま当然か。いきなり見知らん奴が、大事な人間の護衛! いいね! とはいかないよな。でもそこら辺は安心していいぜ。お嬢様のお守りはアンタらがやればいい。俺はただ一緒について行って、パーティー潰す。それだけだ」

「夜空殿!? その話は、」

「パーティーを潰す? 一体どういう事ですか?」 

 

 夜空の発言にユリウスはマズいと思ったのか口を挟むが、しかし、タイムの威圧感のある声によって掻き消される。

 

 


「あーそれは、な。俺はお嬢様に手を出そうとした奴と、その裏にいる奴ら全員を根こそぎ潰したいんだ。だからパーティーを檻にして、集まってきた奴らを捕まえる。そして、その場の全員を尋問にかけて主催を炙り出そうと思ってる」  


 なんでも無いようにそう言い放った夜空にタイムは絶句した。


「お待たせしました〜、ご注文の品です〜」


 そして、店員の間延びした声が響いた。



 ◇◇◇◇◇



 暫くしてハッと我にかえるタイム。

 そして届いたものを呑気に頬張る夜空を見たタイムは額に青筋を浮かべた。


「そんな事が本気で可能だと思っているのですか……? 関係ない人間を巻き込めば取り返しのつかない事になりますよ!?」

「た、タイム!??」


 バンッと机を叩き立ち上がり、声を荒げて夜空に詰め寄るタイムと、見たことのないタイムの姿に動揺するリリス。


 そして、何故か静観するユリウス。


「落ち着けよ、アンタの言い分はわかる。だけど、それがどうした? アンタの守る対象はリリスお嬢だろ? だったら他は関係ない。それに何も殺すわけじゃ無い。有効活用させてもらうだけだ」

「ッ!? 白銀の姫の情報では……、その会場には多くの要人が参加する、と。それに手を出せば、世界に多大な影響がでる。それでも尚! それでも貴様は! 同じ事が言えるのか!?」


 それは店にいた関係ない者たちが皆硬直してしまうほどの声。リリスや、ユリウスもまた驚いていた。

 

 しかし、夜空は違う。

 夜空はその蒼い瞳でタイム目をしっかり見ていた。

 そして。


「あぁ、言えるね」


 そうなんの迷いもなく答える夜空。

 

 その答えにタイムは……。


「そうか、貴様の答えはわかった。どうやら私の目は狂っていなかった」


 そう言ってのらりと席を立つタイム。


「決闘だ、天海夜空。貴様は私が粛清する」


 燃えるような赤い目で夜空を睨み、タイムはそう宣言した。


「ハッ! 決闘? いいね、受けて立つ!」


 その宣言聞いた夜空もまた席を立ち不適な笑みを浮かべた。

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