異能者たちの宴 2
【CREA】ビル 最上階 社長室
「この招待状、まさか……」
何やら深刻そう呟くスーツの男、切夜。
「どうかされましたか?
それが気になった、金髪美人秘書は聞いた。
「あぁ、少しな。これを読めばわかる」
そう言ってスーツの男、切夜は金の装飾が施された一枚の紙をデスクへと置く。
その紙を手に取った秘書は、サッと目を通していく。
そして、その内容に驚愕する。
「こ、これは!? IMDの!?」
「そうだ。奴らが本格的に動き出した。遂に天海夜空という怪物を討ち取る準備が整ったらしい」
驚愕の顔を浮かべる秘書とは違い至って冷静な切夜。
「急いで、花恋を呼び出せ。いい機会だ。三日後のパーティーに集まる者すべて、彼女の餌になってもらう」
そう言った切夜の眼鏡の奥で漆黒の瞳が、揺らめいた。
◇◇◇◇◇
街外れの駄菓子屋
「よしっ! そうと決まれば早く、リリス? だっけ? に合わせてくれ」
「少し待ってください……。まだ頭が追いついていないんです。夜空殿、パーティーを潰すとは一体……?」
夜空の発言に未だ困惑してるユリウス。
「んな事聞かれても。言葉通りだよ。俺がパーティーにリリスお嬢の護衛として潜入するだろ? そしてパーティー開始まで待機する。そして、参加者全員集まった瞬間に誰も外に出れないようにする。それからは流れで怪しいやつ一人ずつぶん殴っていって、親玉に行き着くまで尋問する。簡単だろ?」
「はい……?」
ユリウス、二度目の停止。
天海夜空という男は常人には推し量れない程の強者であり、馬鹿だった。
「ま、詳しい話はリリスお嬢の前でしてやるよ。だから早く案内してくれ、ユリウスさん」
「わ、わかりました……。お嬢様は現在近くの喫茶店で、もう一人の護衛とお茶をしておりますので、そこへ」
夜空という男の発言について考える事を放棄したユリウスは素直に頷き、椅子を立つ。
「それじゃ行くか!」
そして夜空はユリウスが店の前に停めていた黒い車へと勝手に乗り込んだ。
◇◇◇◇◇
喫茶店 めーぷる
「ねぇ、タイム〜。ユリウスはまだ帰ってこないの?」
満開な桜を思わせる美しい桃色の髪と翡翠のような瞳。まるで西洋人形のように美しく整った顔をした少女は口を尖らせて隣に座る金髪赤目の女性へ問いかけた。
そんな少女へ金髪の女性、タイムは言った。
「さっき行ったばかりですよ、リリスお嬢様」
「そっかー。ユリウスの会いに行った人ってどんな人? 怖い人だったら、やだなぁ」
椅子の背に身を任せ足をプラプラとさせるさせながら言う、リリス。
「その心配いらないかと。何故ならユリウスの会いに行った少年の素性は白銀の姫から伺っています。あの情報屋は、情報を隠すことはあっても、情報に嘘はつきません。ご存知でしょう?」
「うん。しーちゃんは友達、だから信じてるよ。でも、情報は情報だよ。実際に会ってみないとわからない事だってあるでしょ? それに、しーちゃんさ、その人の外見とか教えてくれなかったんだもん」
タイムの言葉にぷくーっと頬を少し膨らませながら反論するリリス。
「確かに、それもそうですね」
その顔を見たタイムは(めちゃくちゃ可愛い!)という心の声が咄嗟に喉から出そうになったがなんとか抑え、答えた。
その後も二人の何気ない会話が続く。
しかし、すぐにタイムのデバイスに一本の連絡が入った。
「リリスお嬢様。ユリウスが帰ってくるようですよ。噂の少年を連れて、ですが」
「本当!? どんな人か確認しなきゃ!!」
そう言ってリリスは椅子を飛び降りて駐車場の見える窓辺へと移動する。そして、それに続くタイム。
すると、ちょうどいいタイミングでユリウスの白い車がやってきた。
「あっ、ユリウスの車だ!!」
リリスもそれを視認すると、期待と不安が混ざったような視線を送る。タイムもまた若干の警戒心が籠った視線を向けた。
そして、車が止まり、中から二人の男が出てくる。
一人はユリウス。そして、それに続く一人の少年。
身長180cm程、乱雑に切られた茶髪に透き通る蒼い目を持つ少年、天海夜空。
「わぁ!! あの人? 凄くかっこいい!!」
「ッツ!!!?」
夜空の姿に喜ぶリリスとは打って変わって、タイムは呼吸を忘れる程の衝撃に襲われた。
「なんだ……、あの化け物は……」
静かにそう言うタイムの目には一人の怪物が映っていた。
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