第3話 西生浦(ソソンポ)へ 修正版
※この小説は「倭城(わそん)」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。
空想時代小説
機張(キジャン)から5里(20kmほど)で西生浦(ソソンポ)村へ着いた。浜は小さいが、沖に大型船を停泊させれば小型船で荷を運ぶことができる。清正は主な家臣を集めて評定を行った。十兵衛も隼人の副官扱いでその評定に参加することができた。
清正が口を開く。
「皆の者、ここまでは順調だった。だが、わしは今後朝鮮の抵抗があると考えている。行長(小西行長)は、朝鮮がわが軍に従い、明への道を開くと思っているようだが、そんなに甘くはない。ましてや朝鮮の民衆は今までの圧政に憤りを感じており、統治さえうまくいけば従うと思うが、なにせ言葉が通じない。略奪は認めんが、徴収は必要になってくる。いずれ、ひずみが出てくると思う。皆も心してあたってほしい」
との言葉に、隼人が口を開く。
「殿、我らはどうしてここにいるのですか? 城造りではないはず。次はどこへ?」
間をおいて、清正が口を開く。
「うむ、隼人ら皆の気持ちはわかる。太閤さまの明攻略は難しいことだが、我らはそれを果たさなければならない。それで、これからの我らの進む先だが、次は蔚山(ウルサン)。そこには朝鮮の砦がある。そして慶州(キョンジュ)だ。そこは古都で城壁もある。そして漢城(ハンソン)に攻め込む。都をわがものとする」
そこで評定に出ていた者たちから歓声があがった。清正の話はつづく。
「だが・・・戦は攻めてばかりでは勝てない。時には守りに入らなければならぬ時もある。そこでだ、ここの山に城を造ろうと思う」
皆が歓声をおさえ、清正の顔を見た。(ここに逗留する)と言い出すのではないかと思ったのである。
「そこで飯田直景をここに残す。直景はここに守りの城を造れ」
直景は加藤三傑の筆頭である。5000石どりで家老格にある。隼人が先陣を任せられる筆頭で、直景は後備えの筆頭である。城造りにも精通している。他の者は妙に納得していた。2万の内の5000が、ここ西生浦へ残ることとなった。
翌日、十兵衛は隼人とともに山に登ってみた。登るにはきつい山である。ここに道を作るのでさえ難しい。ということは、敵も攻めにくいということだ。獣道を見つけ、藪の中を切り分けながら1刻(いっとき・2時間ほど)で登ることができた。
頂上から見ると、蔚山方面の北側、海が見える東側、釜山(プサン)方面の南側の見通しがきく。問題は馬出しをどうするかだが、西側に尾根が続いており、まわり道をすれば馬で上り下りができそうだ。籠城するにはもってこいの地かもしれない。と十兵衛は思った。隼人もそう思ったのか
「殿は、一目見てこの山を気に入ったそうだ。殿の眼力はすごいな」
と口にした。
「さすがでございますな。城造りの達人でございますな」
「戦も強いぞ。要するに頭がよいのじゃ。いろんな考えがでてくる」
「隼人さまもそう思いますか。非のうちどころがありませんな」
「いや、ひとつある」
「あるのですか?」
少し間があって
「太閤びいきのところじゃ」
「いけないのですか?」
「昔の太閤はすごかった。だが、今の太閤は・・」
と隼人は言葉を濁した。荒木村重・仙石秀久、ともにかつての主君が信長や秀吉に倒された隼人にはつのる思いがあるのかもしれない。
明日には蔚山に進軍である。十兵衛は弥兵衛に命じ、鉄砲の点検をしてから寝るようにと伝えて、寝床に入った。
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