第2話  結城誠の捜査開始

 現場に到着したのは、府警のエースと呼ばれる結城誠。彼は鋭い目つきで周囲を見回しながら、現場の状況を一つずつ確認していく。結城は30代半ばの刑事で、その冷静さと洞察力から、数々の難事件を解決してきた実績を持つ。


「これは普通の殺人事件じゃないな…」結城は遺体を見下ろしながらつぶやいた。


 相棒の美咲もまた現場に到着する。彼女は20代後半の女性刑事で、結城の捜査スタイルに深く共感しており、二人のコンビネーションは非常に優れていた。


「結城さん、これは…」美咲はメモを手に取りながら言葉を詰まらせた。「犯人のメッセージでしょうか?」


「可能性は高い。だが、このメモの意味を解読しなければ、犯人の目的が分からない」結城はメモを注意深く見つめ、頭の中で考えを巡らせる。


 そのとき、藤堂警部が現場に姿を現した。彼は50代のベテラン警部で、長年の経験から数多くの事件を手がけてきた。藤堂は結城に声をかける。


「結城、この事件、何か大きな陰謀が隠されているような気がする」


「俺も同感です、警部。これまでの殺人事件とは明らかに異なる何かがある」結城は藤堂に頷き、捜査方針を議論し始めた。

 

 捜査会議は午前4時半に大阪府警2階会議室で開かれた。

 結城はマイクに向かって喋った。

「魚崎匠は、30代半ばの男性で、職業はアウトドア用品メーカーの営業担当者でした。彼は顧客との信頼関係を築くのが得意で、アウトドア活動への情熱を持ち、休日にはよく登山やキャンプに出かけていました。特に富山県の山々を好んでおり、休日には地元のハイキングクラブのメンバーとして活動していました。

 魚崎は人当たりが良く、社交的な性格でしたが、職場では厳しい交渉人としても知られており、契約の締結には強い信念を持っていました。また、地元のコミュニティ活動にも積極的に参加し、町内会の役員も務めていました。

 しかし、彼には表に出さない裏の一面もあり、数年前から一部の顧客と不透明なビジネス取引に関与していたという噂がありました。彼の死に至る前、仕事において何らかのトラブルを抱えていたのではないかと考えられています。

 魚崎匠は、家族には妻と幼い娘がいます。彼の突然の死は、彼らにとって大きな衝撃となりました」


 夜の静かなリビングルーム。美咲は一日の仕事を終え、ようやく自分の時間を楽しむことができるひとときに浸っていた。ソファに深く腰掛け、手には冷たいビールの缶が握られている。テレビの画面には、彼女がずっと楽しみにしていた映画が始まろうとしていた。


映画のジャンルは、アクションとサスペンスが絡み合うスリラー映画。警察官として日々緊張感に満ちた仕事をこなしている美咲にとって、この映画は現実の世界から少し離れて、完全に物語の中に没頭できる貴重な時間だった。


映画の冒頭、主人公が敵に囲まれながらも大胆に切り抜けるシーンに、自然と美咲の目が釘付けになる。「こんな状況でどうやって逃げるんだろう…」と心の中でつぶやきながら、彼女はビールを一口飲んだ。


激しい銃撃戦のシーンでは、美咲は無意識にソファの縁に体を乗り出していた。彼女自身も捜査中に危険な状況に何度も直面してきたが、映画の中で繰り広げられる非現実的なアクションには、別の楽しみがあった。「現実はこんなに派手じゃないけど、やっぱり見ていてスカッとするわね。」と微笑みながら、再び画面に集中する。


映画が進むにつれて、主人公が犯人の真相に迫り、次々と謎が解き明かされていく。美咲は、捜査の過程で直面する困難と、このフィクションの世界が重なる瞬間に共感しながら、映画に引き込まれていった。


クライマックスに近づくと、物語の緊張感が一層高まり、テレビの前の美咲も自然と手に汗を握っていた。予想外の展開に、思わず「うわっ!」と声を上げるが、すぐにその声を手で押さえた。自分の反応に少し照れくさくなりながらも、やはりこういった映画の醍醐味を楽しんでいる自分に気づき、思わず笑みをこぼす。


映画が終わり、エンドロールが流れ始めると、美咲は深く息をつき、ソファに身体を預けた。「やっぱり映画っていいなぁ」と、満足げに呟きながら、リモコンを手に取ってテレビを消した。


明日からまた、現実の事件に立ち向かわなければならない。だが、今夜の映画のように、どんな困難が待ち受けていても、自分ならきっと乗り越えられる。美咲はそう信じて、少しほろ酔い気分で寝室へと向かった。

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