第10話 会議

時は遡り…


洋風造りなモダンな建物。

この中では急遽、とある重要な会議が行われていた。

人数は10人ちょっとといったところか。


髭をこれでもかと蓄えた老人がいつもの様子で言う。


「え、えぇーこれから狩人協会通常会を始める。」


「爺さん違いますよ。臨時会です。臨時会。」


「そうじゃった。トキちゃんありがとう。う、んん、臨時会を始める。」


2人の掛け合いもこの場では定番となっている。


「本会での議題は人型モンスターについてじゃ。これについてはハンジ。お前から頼めるかのぉ。」


スーツを着た男が発言する。

「はい。グランドマスター。まず、今回確認されたモンスターは人間の女型で、感知器に反応があったそうです。それだけでなく言葉を喋り、人間と同等の知能を持っていたという事です。」


その場にいる全員の顔が強張る。

理由は単純明白、モンスターが知能を持つ。

それを狩人が聞いたら全員が全員同じ反応をするだろう。

D級モンスターが群れるだけで、相当な脅威になるのだ。

それを束ねるモンスターが知能を持っていたら?

また、C級、B級モンスターを指揮することが出来るとしたら?

そんなことを考えないわけにはいかないのである。


ザワザワ 


「そのモンスターが街中に現れた目的は!戦闘能力は!」


この中では比較的年若い男が叫ぶ。

そして、今度はいかにもといった感じのご意見番が言う。


「そもそも、本当にそんなモンスター要るのかね。」


当然の疑問である。

狩人の常識として、モンスターは知性を持たないもの。

知性があるモンスターを目撃したのは、狩人養成所の生徒数人。

証言としては弱い。

それにそんな例聞いたことがない。

人間は、過去に例を持たないものを拒絶する生き物なのだ。



ザワザワ


「まぁ皆、落ち着け。」


老人の一言でその場が静まる。


「まだ、大きな被害は無いのじゃろう?」


「しかし、被害が出てからでは遅いのでは。」


「どうしたものかのぉ。アイツがここにいればのぉ。」


「あの人はあなたと喧嘩してから、1度もここに来てないからねぇ。。」


ヒソヒソ


「グランドマスターが言っているアイツって誰のことですか?ハンジさん。と言うか喧嘩って何の事ですか?」


若い男が言う。


ハンジは少し困った顔をして

「あ、まあ、お前ならいいか。お前は3人のトップスレイヤーがいることは知っているよな。」


「はい。グランドマスターとトキ様は別格の強さを持つって聞いたことがあります。」


「そうだ。そして、グランドマスターとトキ様がトップスレイヤーってことは知っているだろ。アイツって言うのは、残り1人のトップスレイヤーの話だ。昔、グランドマスターには、1人の弟子がいたんだ。そいつは俺も知っているが、グランドマスターの行く所、行く所いつもピッタリでな。本当の親子のような関係だったんだ。しかも、才能があるやつでな、すぐに狩人でも結果を出し始めた。でもある時、何が原因かグランドマスターと大喧嘩してな。それからここにも寄り付かねぇ。今、何処で何をしているのか。」


「そんなことが有ったんですね。でも、そんなに仲が良かったのに何で‥。」


「分かんねぇ。グランドマスターはその事は話したがらねぇからな。」





「学校の対応はそれでいいとして、知性を持ったモンスターには、上位の狩人を出来るだけ早く向かわせる様にする他無いだろうのう。街の中まで、感知器に引っ掛からずに入られたということは感知器を作動させない方法を知っていると言うことだからなぁ。」


「それしかないでしょうな。」


1人が同意すると。


「では、ワシは昼寝の時間が来たので失礼するぉ。」


ゆったりとした足取りで2人は出ていく。

この場では、グランドマスターの言葉はそのまま決定となる。




派手な服に身を包んだ女の声がそこに響く。


「はーかーせー」


博士と呼ばれた白衣を着た男はチカチカと光る画面を覗き込むようにして見ている。

それは、まるで子供が大好きなアニメを見ているかの様に。。


「ナにしてんの~?」


「お前か。今良いところだからほっといてくれ。」


「え~。つまんないんだもん。最近はかせ、そればっかで全然構ってくんナいし。そんなことばっかりやってるとあたしたち家出しちゃうよ。博士のバーカ。」


スーツをきっちりと着た男がいう。


「私を巻き込まないで下さい。私は貴方と違うので。第一博士は正直ではなイです。もし、博士が馬鹿だったら私たちはここにはいないですから。」


「うぅー、まあそうだけど。ってあんた私とハちがうってどういう意味よ!」


「お前たち喧嘩をするな。うるさくて音が聞こえない。」


「博士ごめん。あんたのせいで怒られちゃったじゃん。どウしてくれんのよ。」


「私は事実を言っただけだ。」


「はぁー!カチーン怒っちゃた。」


「って博士~。どこ行くの?」


「お前たちがいない所だ。」


「えー、待ってヨー」


慌てて女ははかせを追いかける。





……

残されたモニターに映っていたのは、ドローンの様な視点から見える映像。

その中では緑のモンスターと男が戦っていた。




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