第9話 進級テスト
「ウルド、お前は進級テストまでの後2か月の間に何かしら方法を考えておけ。このままじゃお前は留年だ。」
ジン先生はそう言った。
そう、狩人養成学校には進級テストがある。
この進級テストで合格出来ないと留年になってしまうのだ。
ウルドの異能は食べたもののエネルギーを力に変えると言うものだ。
最近分かったが、この異能の効果はとても低い。
転生してから10年近く、ボクは相当な量のご飯を食べてきた。
それなのに、ボクは普通の人間の1.5倍程度しか運動能力が上がっていない。
普通の感覚では、10年で1.5倍だったらいいと思うだろうがモンスターと戦う上では常人が1.5倍強くなった程度では、相手にはならないのだ。
もちろん筋トレもしている。
毎日筋肉痛になるくらいには。
なのに弱い。
みんなはどんどん異能を使いこなせるようになっているのにボクだけだ。
この約半年1番成長したのはフェイだ。
フェイの能力は体の中に空気を吸い込み、筋肉と皮膚の間に貯めてダメージを少なくさせるものだ。
動きが遅くなるのが、弱点だった。
しかし、フェイは体に入れる空気を圧縮することで、強度と俊敏性を上げた。
あの人形の測定では黄色に変えることが出来るようになっている。
傷を回復させる異能をもつリリーも異能の応用で緑色に変えることが出来ている。
アレックスはいわずもがな黄色に変えれる。
ミリーもだ。
ボクだけ置いてきぼりだ。
どうすればいい?
「ねぇ、ウルドくん。」
考えているとミリーちゃんに呼ばれたので顔を上げる。
「ミリーちゃん、どうしたの。」
ミリーちゃんが自分から話をする事はほぼ無い。
「はい。これあげる。」
ニコニコとした顔でミリーちゃんは何か渡してきた。
「何これ?ミリーちゃん?」
そこにミリーちゃんは居なかった。
手の中を見ると飴?のようなものがあった。
(きっとボクが落ち込んでいるのを見て慰めてくれたのだろう。)
単純なことで、ミリーちゃんの好感度が上がる。
不思議な子だが悪い子ではない。
こうしてウルドは、テストまでの2か月の間悩み続けることになった。
○
テスト当日
結局ウルドはなにも変わらなかった。
基礎体力は確実に上がっている。
しかし、それではこのテストは合格にならない。
今回のテストはより実践に近い形のテスト。
モンスターとの戦闘だ。
とはいえ、A級やB級モンスターなどではない。
精々、D級と言ったところだ。
D級モンスターは狩人界では、最も恐れられている。
単体では、素人でも5人いれば勝てると言われている。
そのせいで狩人でも逆に油断してしまう。
コイツなら勝てる。
何回も倒してきた。
大丈夫だ。と
D級モンスターが狩人から最も恐れられる時は、その圧倒的な数そして、それらが集団を作った時だ。
モンスターは知性がないため、群れることはない。
しかし、近年群れを成して襲ってくることが確認されている。
テストでは、そんなD級モンスターと戦い勝つことが求められる。
「さーて、テストの時間だ。誰からやる?」
「ボクが最初にやります。」
ウルドが真っ先に手を上げる。
確かにボクにあれから変わったことはない。
ただ、いま出せる全力を出すのみ。
それで奇跡が起きるとも思っていない。
なぜならこの世界の主人公はボクではないから。
でも、留年することになったとしても学校に入ってからのこの1年間を無駄にはしたくない。
「準備はいいな。じゃあ始めるぞ。」
「はい!」
ガラス越しにモンスターが出てくるのが見える。
体長は1メートルないくらいだろうか。
緑色の体。
それに似合わない大きな顔。
口からは変な汁が垂れている。
前世ではゴブリンと呼ばれていたものに少し似ているかもしれない。
ゲームや教科書では散々とみてきたモンスターだが、現実で見るとわかる。
こいつは、奪う力を持った生物だと。
「ギャーギャー」
「始めっ」
まずは、こちらから攻撃する。
「コンバットッ。うぉーーおおー」
このモンスターは人型だ。
なので弱点は人間と同じだ。
顎を揺らせば脳震盪を起こす、狙うは顎だ。
「ギギギィーー」
当然モンスターも動き出す。
ゆっくりした動き、、から速度をあげる。
「ッ速い!」
ドカーンッッ
「ッく!」
痛い。
防御の為に前に出した右腕の骨何本かは折れていそうだ。
強い。
正直舐めていた。
利き手である右腕はもう使い物にはならない。
負けなのか。。
ウルドは、また諦めそうになる心に鞭をうつ。
いや、まだ1つだけある。
この2か月の間ボクは何も変わらなかった。
でも、どうしたらボクの異能を上手く使えるかそれは考え続けた。
そして、あるひとつの可能性に辿り着いた。
それは、ボクが今まで食べてきたものは普通の人間が食べるような普通の食事だ。
ボクの異能は食べたもののエネルギーを力に変えるというもの。
普通の食事だったせいで効果が低かったとしたら。。
もっとエネルギーがあるのもの。
もし、モンスターを食べたらとしたら‥
今までモンスターを食べた人なんて、聞いたことがない。
どんな副作用が出るかも分からない。
もしかしたら死ぬかも知れない。
でも、モンスターを食べてそのエネルギーを力に変えられたら‥
可能性はある。
いや、これしか可能性はない。
なら、やらない手はない。
覚悟を決める。
「さあ、こい!」
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