第8話 ボクの未来

ザワザワ ザワザワ


ガラガラ


扉があきシド先生が入ってくる。

その扉に黒板消しを挟んであるということもなく‥


「全員揃ってるか、ホームルーム始めるぞ。」



「お前らの中には知っているやつもいるだろうが、この学校の生徒が新種のモンスターと思われるものに襲われた。これを受けて狩人協会から学校へ指示があった。まず、周辺の警備の強化。下級学年であるお前らには先生が専属でつく。とはいっても5人1組でのグループを作れ。そこに教師が1人がつき少人数で授業する。」


これは、教師が怪我などで狩人として活動できなくなったものたちの下請け場であったことで出来た対応であった。

片腕を失くしたりしたような狩人はモンスターを狩ることは難しいD級などであれば出来ないとこはないが、ベテラン狩人であれば協会が相当の給料を出さなければいけないのでコスパが悪い。

なので、教師になるのだ。

と言っても近年の狩人養成学校の入学数の減少によって供給過多となっているのだが。


「授業の内容は担当の教師がグループに足りないと判断したことをやるので、昨年までより先行的な内容になる。あとは担当の教師の言うことはしっかりと聞くように。」




ホームルームが終わった。

ウルドたちはまだ戦いで受けた傷が癒えていないので、病院の病室からリモートで参加中だ。



「とは言え、私たち4人しか居ないけどどうする?」


「いや、私もいるよ。」


何処からともなく突然の声。

(リリーか?

いや、この声はミリーだ。)

すると、ミリーがひょっこりと、ドアから現れた。


「ミリーお前また髪の色変えたのか?」


「あ!アレックス、ウルド久しぶり!元気だった?」


「おい!ミリー、俺様の質問に答えろ!!」


「あ。ああフェイか。。これね。ちょっといいことが有ってね。」


ミリーの髪は黒色に染まっていて、カラコンも黒だった。

その時の顔は満面の笑みといった感じで、本当に良いことがあったことが窺える。


「ミリー貴方、私もいるよってどういう‥」


(リリーとミリーは仲が悪い。

というか、ミリーがリリーを避けている。)

ウルスは2人が喧嘩しないかドキドキだ。


「あ、私も学校通うから」


姉妹であるリリーも知らなかった事から、突然の話だったことが分かる。


ということがあり、ウルド、アレックス、フェイ、リ

リー、ミリーの5人でグループを作ることになった。

ウルドが知らなかっただけで、ミリーは元々入学はしていたが通っていなかっただけだったということが分かった。

不安は残るもののウルスは無事グループを組むことが出来た。




グループが決まってから数日たったある日。

ウルドたちのグループの教師が決まった。


「君たちのグループを担当することになった。ジンだ。1年生の間は俺が教えることになる。見たことない顔のやつもいるので、改めてお前らの今の実力を見たい。1人ずつ掛かってこい。」


(いきなり1人ずつ掛かってこいと言われてもなぁー)

と弱気なウルス。

しかし、以外な人物が手を上げる。


「私がやるわ。」


「ミリーあなた戦えるの?」


ミリーが戦っているところを見たことがある者はここにはいなかった。

(ミリーの異能は確か、自分の分身を作ることが出来る異能だ。

戦闘では、とても強そうだけどあの細い体で戦えるのか?)


「よし、ミリーかかってこい。」


(ジン先生どんな異能何だろう。アニメでは明かされなかった。)

ジン先生は体術系の先生と言うことしかウルスは知らない。

ましてや先生が戦っているところなど現実では、見たことがないのだ。



「コンバットッ!」


「お、この異能は、なかなかやるな。だがっ」


ミリーが増え、そして数の暴力といわんばかりに攻め立てる。

しかし、増えても増えても次から次へとその数は減っていく。

ついには本人ただ1人。


バタッ「くそっ」


(どんな異能か分かんないや)

この場にジン先生の異能見ただけで分かった者はいなかった。



「で、次はどいつだ?」


「先生ってこんなに強かったの?確かに先生が戦っているところを見るのは初めてだし、リリーの実力もあまり分からないのだけど。。」


「あ、お前ら知らないのか、これでも俺、昔はスレイヤーだったんだ。」


「え、まさか先生があの隻眼のジンなんですか?。」


「リリー知ってるのか?」


「うん、アレックスは知らないかも知れないけど私、昔の狩人とかのマニアなんだよね。全部で、2000体くらい狩っているって、ファンブックに書いてあったわ。」


リリーは生粋の狩人オタクである。

それこそ命の危険がある狩人の世界へ自分が入ってしまうほどに。


「それってすごいのか?」


「すごいなんてもんじゃなんわ。」


「普通の狩人は良くても人生で50体くらい。それこそ準トップスレイヤーレベルよ。それこそトップスレイヤーに推薦されてもおかしくない程度にはすごいわ。でも何で教師に…」


「いや、あれはレベルが違う。まあ、そんな過去のことはどうでもいい。俺には傷が在るからな。」


(先生はどこも悪そうじゃないのに)

狩人養成学校の教師は大体が怪我などで現役から退いた元狩人だ。

しかし、ジン先生にはそれらしき傷は見当たらない。


「大切なのはこれからだ。お前らの狩人としての未来のことだ。さあ、次は誰だ?」


「「ボク(俺)です(だ)。」」


(ボクは強くならないといけないんだ。

こんなんじゃなにも守れない。)

ウルドは焦っていた。

そしてアレックスも。

女モンスターに良いようにやられてしまった。

その事実は彼らのちっぽけなプライドを刺激し、より努力させる。


(俺はみんなを守るために強くなる。)


「お前ら仲がいいな。よし、それじゃあ全員まとめてかかってこい。」


「「「はい!」」」





結局ジン先生には、1度も勝てなかった。

可能性が有りそうだったのはアレックス、ではなく、最初に1人で戦ったミリーだった。



「はぁー。これから毎日あんなのやらされるのか。先が思いやられるぜ。チッ。しかも、ダメ出しばっかだしやがって。」


「フェイはいい方だよ。異能の使い方にもっと工夫が出来るって話だろ?ボクなんか基礎がダメって言われちゃったんだから。はぁー。」


なんでこんなにボクは弱いんだ。

それにおかしい。

ボクが知っているストーリーでは、主人公たちはあの女モンスターに襲撃されるというイベントは無かった筈だ。

もしかして、この世界はボクが知っているモンスタースレイヤーズの世界とは異なっているのか?

でも実際ミリーもこんな序盤で出てくるようなキャラじゃない。

じゃあ、ボクが生きているこの世界は一体‥‥


ユサッ ユサッ


「ねぇ、ねぇ、ちょっとウルスってば」


「あ、ごめん。」


「あ、ごめんじゃないよ。ちゃんと話聞いてた?」


「‥‥‥」


「だから、自分が未来でどうなりたいかをイメージするといいって先生言ってたでしょ。ウルスはどうなりたいの?」


「ボクは‥」


(ボクの未来の姿は)


ズキッ


そう考えた瞬間、ウルスの頭にアニメで見た闇堕ちしたウルスの映像が映る。

人間だろうが、友達だろうが、世界だろうが、全てを破壊尽くす。

そんな存在。

顔には微笑が張り付いているが、身体はモンスターの様に変形し、多分心もボロボロだと思う。

あの顔は、ボクがいじめられているときにそっくりだから。

そんな未来はだめだ。

ボクの未来は家族みんなで笑い合える。

そして、ボクはアレックスやフェイ、リリー、ミリーとモンスターを倒すそんな未来。

そこでは、ボクは何を。


駄目だ。

「ボクには具体的なイメージが湧かない。」


「そっか。そうだよね私もまだ、何にも分からない。でも、ウルスやみんなと一緒に居られればそれでいいのかも。」


「そうだね。」


今はそれでもいいとウルスは思った。

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