第7話 アレックスの想い

俺が7歳のとき両親をモンスターに殺された。

両親は一般人だった。

俺は5歳のときに異能が発現した。


小さい頃から狩人になりたかった俺の夢を心配しつつも叶えさせてくれようと安くない金を払って、狩人を目指す子どもたちが通う道場に通わせてくれた。



両親が殺されたのは俺が道場からかえってきた後のことだった。

何故かその時は外の景色が見たい気分だったので外をボーっと見ていた。

すると、突然丁度見ていたところに空間の歪みができ、中から人が現れた。

その瞬間、道場で貰った感知器が警告をだし始めた。

何か悪い予感がした俺は、両親にその事を伝えた。

両親も俺を信じてくれ、逃げようとしていた時のことだった。


ピンポーン


玄関のインターホンが鳴る。


俺と両親はモニターを見た。

さっきの歪んだ空間のから出てきた人だった。

さらに悪い予感がした俺は逃げようとしたが恐怖でその場から動くことが出来ない。

隣の両親も顔が青ざめていたので同じだったのだろう。


ピンポーン


ピンポーン


ピンポーン


どれだけ時間がたってもインターホンの音は鳴りやまない。


「失礼します。」バリッ


その誠実そうな声の後に、謎の男がドアを壊して家の中に侵入してきた。


そして、俺たちの位置を知っているかのように階段を上がってくる。


ドン ドン


ドン ドン




ゆっくりとドアが開く。

ついに、その男の顔が見える。

身長は、高いが体型は普通。

どこにでもいる男といった感じだ。

心配は杞憂に終わったかと思ったが、不法侵入してくる男が普通な訳がなく。

何より体を動かすことが出来ないほどの恐怖は今でもあった。


「こんにちは、今日はいい天気ですね。私は斎藤と言うものです。皆様からはモンスターと呼ばれています。本当は家族全員殺せという命令なんですが、私の良心がそれをやめさせます。なので貴方たち2人が死ぬか息子さんが死ぬか選んでください。」


斎藤と名乗ったその男は、自分のことをモンスターだという。

人の形をした喋るモンスターなど聞いたことがない。が、感知器の音は鳴りやまないどころか音が大きくなっているので、その言葉に嘘はないのだろう。

そして両親か俺の命を選べという。


「あ。あぁ」


僕は喋ることが出来なかった。

声が出ないのだ。

まるで水を何日も飲まなかった時のように。

両親同じ様子だった。

でも、両親は声が出てないことに気が付き、自分のことを指差した。

その瞬間俺は両親が自分たちが犠牲になることを選んでいるということを理解した。

やめてくれ。

俺が‥

しかし、俺は自分に指をさすことは出来なかった。



「分かりました。とても素敵な家族愛ですね。憧れます。では長々と殺るのも趣味が悪いので。」


最初、何を言っているのか分からなかった。

人を殺すことをまるで息をすることのように、そいつは言った。

俺は目を開けないようにすることしか出来ない、見てしまったら心から何か大切なものが失われる気がしたから。

俺は、例え記憶喪失になったとしてもこのとき聞いた音を忘れることはない。

そして、音が止み。

俺は生きていた。

あの時、もっと早く狩人が来てくれれば。

そう思わなかった日はない。



それからというもの、俺はあのときの恐怖と大切な者を失う恐怖その両方の恐怖から誰かが近くに居てくれないと不安になってしまった。

そんな時に側に居てくれたのがリリーとウルスだった。

2人は俺が自暴自棄になっても、毎日毎日声をかけてくれた。

2人がいてくれたお陰で俺は、今でも狩人を目指すことができている。






目が覚めると、病院だということを聞いた。

もうみんなは目が覚めているようだ。

どんな顔でみんなに会ったらいいか分からない。

俺は、感知器が鳴った瞬間に両親が殺されたときのことを思い出した。

そして、みんなに落ち着くように言ったのに俺が単独で突っ込んでしまった。

同じ喋るモンスターなら、何か知っているのではないかと。

みんなを守っている姿がカッコよくて狩人を目指したのに、自ら仲間を危険にさらしたんだ。

いくら、授業でいい成績をとろうと先生に誉められようが関係ない。



トントン 


「失礼します。」


ズズズ


扉が開く。


「やぁ、アレックス大丈夫か?」


ウルドは軽い口調でそんなことを言う。


「やぁ、ってお前、、ごめん俺のせいでお前達を危険にさらしてしまった。謝ってもあやま‥」


「いいよ」


「いいよって何で?何でだよ。俺は俺は‥」


「責任感じすぎだよ親友。ボクはあの時、諦めてたんだ。もうダメだってね。でも君の声で諦めちゃいけないって思えたんだ。だから、誰一人死ぬことなく生きて帰ってこれたのは間違いなく君のおかげさ。でも、皆には謝るんだよ。許してくれると思うけど。」


「ウルドお前‥」


「泣くなよ僕までつられて‥」


その後2人は泣いた。

何が理由で泣いているか分からなくなるほどに。



俺は、もっと強くなりたいと心の底から思った。

それは、ウルスやリリーを守る意味でもそして両親の仇をとる意味でも。。

あの女は、確実に俺の両親を殺したやつと関係がある。

両親を殺したやつとあの女は纏っている空気が似ていた。

次、会うまでに必ず力をつけて、両親の仇は必ずとってやる。

俺はそう心に誓った。





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