第6話 戦い

フェイの怒号が飛ぶ。


「おい!アレックス止まれって、お前が距離をとれっていったんだろ。」


その声に耳を傾けることなくアレックスは突っ込む。

その心の中は疑問、怒りの感情が渦巻く。

そして、異能を発動させる。


「コンバットッ。みんなの想いを力に。フルインパクト!」ドォーン


「やったか」

(攻撃が当たったにしては妙に軽かった。これは‥)



「痛~い。痛いじゃないかプンプン。お姉さん泣いちゃうよ。もう怒った。こっちからもいっちゃうよ」


「うっひゃー。ドーン」


(スピードが違う。これはやられる‥)


この中で一番強い筈のアレックスが翻弄される。


ズドォーン

「攻撃がきいて、ない、のか。はぁ、はぁ、う、うう」バタッ


「あハッ、気絶しちゃった。ごめんごめん。この子ちょっと強いから力加減ミスったわ」


「チッ、よくもアレックスを。俺様が相手だ!」


「そうよ、私たちがお前を狩る!」


フェイとリリーは焦っていた。

この女の強さを分かっていたつもりだった。

しかし、アレックスが翻弄されたことで2人には焦りが生まれた。


「「コンバット!」」


その結果


ズドォーン

「な、なんなのよアイツ、こんなことって‥」バタッ


「は、はぁウルドお、お前だけでも逃げろ。走り込みしてたろ、おまえなら」バタッ


(あり得ない、あり得ない)


リリーはともかくとしてフェイが肉弾戦でやられるなんて。

フェイには物理的な攻撃では、ダメージはほぼ通らない筈なのに。


フェイの能力は体の中に空気を限界まで吸い込み、筋肉と皮膚の間に空気をため、風船のようになり物理的なダメージを減らすというもの。

しかし、限度はある。

ただその限度を越しただけ。

その事実がウルドに重くのし掛かる。



ボクはどうすればいい?

頭を使え。

フェイが言ったように、全力で逃げるか?

生き残ることを考えるならば全力で逃げた方がいい。

いくらか可能性はある筈だ。

それに、残ってもやられるだけだ。

しかし、それでいいのか?

仲間を見殺しにするのか。

それは原作のウルドと、どう違うんだ?

それでニーナを守れるようになるのか?


いや、ダメだ。

ボクは逃げる為に転生したんじゃない。

もう逃げないため。

そして、この幸せな生活を守るため。

前世のボクみたいな弱者を助けるために‥



「はぁー疲れた。後は君だけだね。どうする?」


「そノ目は殺るかい?」ニタァ



「ボクはもう、逃げない!」


「コンバットッ」


ウルドは女モンスターが殴って来るのを無視して突進する。


「ウォォぉーーー」


あいつの攻撃にはクセがある。

一度目の攻撃は必ずフェイクだ。

しかも、こいつは今ボクを舐めてる。

チャンスはある筈だ。

チャンスは1度きり、これを逃したらチャンスはない。


「いい覚悟だね。、うっひゃーい。あ、れ」


掛かった。

ウルドはそう思った。

上手くガードされるだろうがその上から今出来る最高の一撃を叩きこむ。


「もらったーあァー」


女は一瞬が笑う。

(まさか誘われた。のか。)


「そ、そんな‥」


女はその攻撃を待っていたかの様にスルリと躱す。

そして、カウンター。


「残念でしタ。」ドォカーン


「ごめんね。坊やアタシにはそんな小手先のことは通じないの。まぁでもなかなかガッツがあって良かったわ。でもそれだけ。なんであの人はこんなやつのことを気にしてるのかしら?まあいいや、終わりにしましょ。」


(あ、ああまた、このまま何もかも奪われるのか。)


いくら転生して外見が変わったからって、中身は一緒。

ボクは変われなかったのか。

もうダメなのか。。


基本的にウルドは心が弱い。

とても脆い。


「ウルドなに諦めてんだよ。まだだろ、しっかりしろよ!親友。逆境には慣れっこだろ!」


アレックス、、、


そうだ。

まだだ。




「「命が尽きるまで戦ってやるよ」」



「貴方達、2人はやっぱり違うわね。イイわ。お姉さんが気が済むまで相手してあげる。」


単純な殴り合いなのにここまで違う。

それは異能の差などではなく純粋な力の差。




「だ、いじょうぶか?」


「はぁ、はぁ き、み、こそ」


2人は何度も気絶しながらも戦い続けた。

しかし、2人はもう満身創痍。

立ち続けていることがやっとであった。


「良く頑張ったわ2人とも。あの人が気にする理由も分かったわ。おっと邪魔者が来たようだわ。様子見の筈だったのに楽しませてもらえたわ。それじゃあまたね2人とも。バーイ」サッッ


女は闇の中に消えていった。


足音。

それもたくさんの。

感知器がなったのは何もウルドたちだけでは無かった。


タタッ


ダタッ

「おい、ウルド、大丈夫か!何があった!これは、、すぐ手当てをするからな。大丈夫だ。」



「ジ、ジンせ、先生、人のモンスター、が、、」

バタッ






夢を見た。


ただの夢なのか、悪夢なのか。

過去に起こったことなのか、それとも未来に起こることなのか、内容は全くおぼえていない。。

だが、悲しい結末だったことは覚えている。


目を開くとそこには天井。


「あ、気が付いた見たいね」


看護師の格好をした女の人が椅子に座っているのが見える。


「ここは‥、アレックスは!みんなは!イタッ」


「ここは狩人専門の病院よ。そして貴方の友達まだ意識は戻って無いわ。でも安心して、重症の子はいるけど、命に別状はないわ。貴方を含めてね」


「だから安静にしておきなさい」



コンッコンッ


「入るぞ。ウルドくんの意識が戻ったというのは本当か。」


30代いや、40代くらいだろうか髭を生やした男がドアを開ける。


「はい、いま丁度。しかし、まだ会話は難しいかと。」


「いいや、時間が惜しい。彼の言ったことが本当なら狩人界、いや、世界を揺るがすことにも繋がりかねん。少しばかり無理だろうか。」


これは彼にとっても急務なのだ。

彼が何を聞きにきたか、ウルドはすぐに分かった。


「いや、でも‥」


「大丈夫です。話せます。それで貴方は‥。」


「これは失礼、私は狩人協会で働いている。ハンジだ。単刀直入に聞こう。君たちは何と戦ったんだ?」





ウルドは測定器に反応があったこと。

まるで知性があるように見えたこと。

そいつが人間の言葉を喋ったこと。

歯が全くたたなかったことなど。

様子見をする筈だったと言っていたことなどを出来る限り詳しく話した。


「やはり本当になのか、そんなことが、、、分かった。協力を感謝する。私はこの情報を本部に持ち帰り調査しなければいけないので、これで失礼する」


ハンジは信じられないほど衝撃的だったのか、汗を流しながら聞いていた。









▪︎謎の場所


この場所をひと言で表すなら

この表現が最適である。


そこに響く足音。


コツンッ コツンッ



コツンッ コツンッ コツンッ



「おーい、みんな~アタシが帰ってきたヨー」


若い女の声が其処に響く。


「アレッ誰もいないの?ハァ、またあそこか。」


女は少しあきれた様子でまた歩き出す。

暗く長い階段を。


コツンッ


コツンッ コツンッ


コツンッ コツンッ

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