第4話 狩人養成学校

狩人養成学校

首都ゴルチェを見渡すことが出来るような立地にあるそれは、広大な面積を誇る敷地に、訓練所、そして、4つの校舎がある。この学校は、現在改築作業中である。

本来は、見るものを圧倒するほどの外観が備わっているはすが、今年は違うようだ。

狩人養成学校は、狩人になる為に通わなければいけない学校であり、今活動している狩人でここに通わなかった者はいない。


4年制のこの学校では、毎年大体1500人の生徒が入学する。

しかし、卒業式に出ることが出来るのは多い年でも、1/3くらい。

途中で退学する者、留年するもの、モンスターとの戦いで死ぬ者。

理由は様々だが、卒業が狭き門であることに変わりはない。

ということは全員がライバルなのだ。

そんな狩人養成学校での一幕。





「頑張れー!」


「ファイトー」


「コンバットッ。」


『コンバット』この言葉によって狩人は集中力が高まる。

いわば、これはルーティンなのだ。


「みんなの応援が俺の力になる!」


大きく拳を振り上げ人形を殴りつける。


「フル、インパクト!」

ドドォーン


今までは全くの無色透明だった人形の色が段々と薄緑に変わる。

アレックスの顔からするとまあまあと言ったところの様だ。


「やっぱり、アレックスは優秀だなぁーテスト本番でもその調子でやれ」


「先生ありがとうございます。」


「アレックス、やったな!」


「お、ウルか、おう!おまえも頑張れ。」


今ボクたちは狩人養成学校で授業を受けている。

授業と言っても今日は実技テストのだ。

テストの内容はあのモンスターに見立てた人形を自分の異能で倒すのだ。

いや、正確にいうと一定量のダメージを与えて人形の色をかえるのだ。

色の変化は最初は白それが強くなるごとに

青、緑、黄、オレンジ、赤、黒、と変わっていく。

黒はトップスレイヤーレベルでないと難しいらしい。

アレックスは緑に変わったようだ。

これには先生も驚いていた。

僕たちのような学校に入りたての1年生は色を変えることが出来るかどうかといったところだ。

緑なんてすごすぎる。

さすがは主人公と言ったところか、

ちなみにアレックスの異能はみんなの応援や勇気、想いを力に変える能力である。

いかにも主人公らしい能力だ。

やっぱり羨ましい。

物語終盤では、仲間が受けた傷の分だけバフがかかる

というチートな異能も、覚醒する。

普通異能は1人1つまでだが、そこは主人公。

スペックが違う。

ボクの異能は食べたものを力に変える能力だ。

ある意味とても人間的と言える。



この日ボクは色を変えることができなかった。

焦る必要はない。

ボクの能力は蓄積していくのだ。

つまり、エネルギーのあるものを食べれば、食べるだけ強くなるのだ。

チートじゃね?

と思ったが、そこで原作のウルドくんは闇堕ちして改造されるまで全然強くなかったことを思い出す。




「うおぉーー」


「よーし、今日の授業はここまで。テストまでき各自練習するように、」


結局人形の色を変える事はできなかった。

大丈夫まだ時間はある。

ボクは楽観的な考えをしていた。




ボクはリリーとフィオと焼き肉を食べに来ている。

食トレだ。

2人もボクの異能を知っているのでよく食トレに付き合って貰っている。

フィオはボクのお金で食べ物を食べたいだけかもしれないが。


「お前、まだテスト合格できてねぇーのかよ。俺様なんか直ぐに合格できたぞ。」


「フィオケンカ売らない。それにあんた5回目でやっと合格してたじゃない。しょーがないのよ。ウルドの能力は特殊すぎるから。それにあんた食べ過ぎよ。」


「ぐ、ぐぅ、」


「いや、いいんだフィオがいう通りだよ。もう合格してないのボクだけになっちゃったし」


ボクは何度訓練をしても色を変えることは出来なかった。

どんなにできない子でも、薄い青くらいにはなっていた。

何でこんなに強くなれないんだ。

こんなことじゃトップスレイヤーになるどころか、ニーナさえ守れない。

焦燥の思いが強まる。


「ウルド、卑屈になっちゃダメよ。方法はひとつじゃないわ。必要なら私たちも手伝うわ」


「ウルドは能力にこだわりすぎてんだよ。ま、そのお陰で俺様はウマイものが食えるからいいけど」


(そんなこと言いながらフィオはアドバイスしてるじゃない)


「ありがとうリリー、フィオ」





でも実際どうすればいいんだ。

ボクの異能はエネルギーがあるものを食べれば食べるだけ強くなるってことだ。

異能にこだわらない?

食トレの時間を減らして筋トレに回す。

まずはやれることをやってみよう。

この体の身体能力を上げれば、必然的にパワーも増すはずだ。

そうと決まれば早速やろう。

ランニング

腕立て伏せ100×5セット

腹筋100×5セット

毎日しようと思う。




テスト最終日になった。

今日合格出来なければこの半年が無駄になってしまう。

そればかりかみんなとも差がつく。


「がんばれー!」

「いけー」


大丈夫だ。

ランニング

腕立て伏せ100回×5セット

腹筋100×5セット

このメニューは毎日やってきた。

できる限りの努力はした。

アレックスやみんなも見てくれてる。

絶対に合格してやる。


「よーし次初めていいぞー」


先生のやる気のない声が響く。


「コンバットッ」


集中力を高める。

まだ練習では色が変わったことはない。


「ウルド頑張れー」


アレックス、ミリー2人が応援してくれてる。

やるしかない。


「っとりゃーーー」


色は変わらない。


「うぉおおおーー」


努力というものは実る方が少ない。


「なんでぇーーーーー」


思えばこんなに何かに夢中になって努力したのは、初めてだった。

ボクは臆病だったのかも知れない。

前世ではいじめられても、物を隠されても、あきらめて抵抗はしなかった。

両親に蹴られても、やり返そうともしなかった。

何か努力して見返してやろうとも‥


「あ、アアーぁー」


「もう無理よ、手がボロボロだわ」


「大丈夫か。ウル。」


「ごめん。リリー、アレックス、」


「やらせてくれ。」

(駄目なんだ。絶対に今ここで変わらないと。運命に流れを任せて何かを奪われるのはもうイヤなんだ)


「ウルゴ‥」


「うぉおおーーーーー」

「はぁーあぁーー」



「終わりだウルゴ。」


「先生!ボクまだできます。やらせてください。」


駄目だ、まだやるんだ。

せっかく転生したんだ。

こんなんじゃ終われない。





「いやー、あのなウルゴ」






‥‥‥‥


えぇーーーーー








「はーあり得ないんだけどあの教師、チィーチとか言ったけ?先生だったらこんなことないのに」


「まさか電源が入ってないなんてな。ドンマイ、ウルとんだ災難だったな」


「まぁでも良かったよ、あのあとちゃんと合格出来た

から」(まあ、薄い青に変わっただけだったけど)











オラにハートを分けてくれー


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