第6話 帰り道

「クレープ食べたい」


 帰り道に幼馴染はそんなことをいうが、ここは都会じゃないのでクレープ屋なんてほとんどない。

 現実的なところで学校の隣にあるテイクアウトのコーヒーの店でかき氷を食べるくらいが学生らしい寄り道だろう。

 残念ながら俺たちの帰り道はそのコーヒー屋とは真逆の方向で、もうすでにあるきはじめているけれど。

 それに、帰れば夕飯が待っている。

 クレープなんて食べたら余計な摂取カロリーになるだろう。


「太るぞ」


 なので俺はそれだけ言って幼馴染をたしなめたつもりだった。

 だけれど、幼馴染はぷくっと頬を膨らましている。

 ちょっと怒っているようだ。

 だけれど、部活をやるでも勉強をするでもなければ、この時間の余分なカロリー摂取は避けるべきだろう。

 間違ったことは言っていないはずだ。

 幼馴染の頬は餌をほおばったハムスターみたいに膨らんだままだけど。

 俺は面白くなって、幼馴染の頬を指先でつつく。

 白くやわらかい。


 しばらく、会話もなく歩き続ける。


 気になるのがさっきからなんだかちょっと幼馴染とぶつかる。

 そう思っていたら、幼馴染の手が俺の手をつかまえた。


「手つないで帰ろ」


 怒ったままなのか、照れているのか、彼女はぶっきらぼうな態度のままだ。


 手をつないで帰るのはなんだか恥ずかしくて、俺の方が赤くなり何もしゃべることができなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る